人類が目指すべき「自然と調和した世界」の姿 「持続可能な世界」とはどのようなものか?

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しかしそのためにはすべての国の協力が必要であり、フットプリントが大きい国ほど、大きな変化を求められる。ある国は取り組み、別の国は取り組んでいないというのでは、この移行は成し遂げられない。

現状では、まだ反発があって、足並みは揃っていない。持続可能性の取り組みについて考えるとき、わたしたちはともすると失うことにばかり目を向け、得ることを忘れてしまう。

しかし現実には、持続可能な世界には得ることがたくさんある。

石炭や石油への依存を失って、再生可能エネルギーを生産することで、わたしたちはきれいな空気と水、誰もが利用できる安価な電力、それに静かで安全な都市を得る。

特定の海域で魚を取る権利を失ういっぽうで、気候変動対策を助けてもくれれば、最終的には天然の海産物を増やしてもくれる健全な海を得る。食卓に載る肉が大きく減るいっぽうで、健康と安価な食品を得る。

再野生化によって土地が失われるいっぽう、遠く離れた陸や海でも、地元の身近な場所でも、生きる喜びを感じさせてくれる自然とのつながりを得る。

持続可能なよりよい未来のビジョン

自然に対する支配を失ういっぽう、のちのすべての世代に引き継がれる、自然に支えられた永続的な安定を得る。

そのような未来を実現するための準備はすべて整っている。プランはあるし、何をすべきかははっきりしている。目の前には持続可能性へと通じる道が見えている。それは地球上のすべての生物にとって、よりよい未来へとつながる道だ。

わたしたちは自分たちがそれをよく知っていることを、この未来のビジョンが単にわたしたちに必要なものであるだけではなく、わたしたちが何より望むものであることを、政治家やビジネスリーダーたちにわからせなくてはならない。

(翻訳:黒輪篤嗣)

デイヴィッド・アッテンボロー 自然史ドキュメンタリー制作者

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David Attenborough

英国を代表する自然史ドキュメンタリーの制作者。BBCの画期的なシリーズを世に送り出し、世界的な自然史ドキュメンタリーの作り手として確固たる名声を博した。代表作に《地球の生きものたち(Life on Earth)》(1979年)、《ライフ・オブ・バーズ/鳥の世界(The Life of Birds)》(1998年)、《ブルー・プラネット(The Blue Planet)》(2001年)、《アッテンボローのほ乳類 大自然の物語(The Life of Mammals)》(2002年)、《プラネットアース(Planet Earth)》(2006年)などがある。

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