グーグルなどの欧米の企業は、すべての人をケアするべきだという認識があり、全社研修を行っている会社も増えています。
一方、日本の場合は、目に見える問題が起きていないのに、なぜ予算を割かなければいけないのかという感覚の企業が多い印象です。
現在、注目されているリスキリングには、DXのようなハードスキルだけではなく、自分でウェルビーイングのケアをするトレーニングなど、ソフトスキルも含まれます。そのソフトスキルは、EQ(心の知能指数)やリーダーシップにも役に立つわけです。
しかし、まだまだ現実とはギャップがあると感じます。
とくに、ウェルビーイングは、はやりのキーワードではありますが、考え方が非常に広いため、経営や人事施策に落とし込んだ時に、具体的になにをすればいいのかわからないという状態にもなりがちです。
基本的には、食事、睡眠、運動がしっかりできていれば、心も体もそれなりに元気でいられます。しかし、そこは会社が直接介入できるものではありません。その点、マインドフルネスやセルフアウェアネス(自己認識能力)は、直接的にトレーニングできるスキルでもあります。
ビジネスパーソンこそチャッターの制御を
大企業で働く人々だけでなく、スタートアップの経営者も、メンタルを病んでしまい、残念ながら事業がうまくいかないという人が増えています。
カリフォルニア大学の専門家が調査したデータによれば、起業家は、普通の人にくらべて、うつになる可能性が2倍、依存症になる可能性が3倍、そして、精神科入院や自殺願望を持つ可能性が2倍高いということです。
事業を回すことに忙しくなり、セルフケアができていないわけです。そして、プレッシャーがとても大きい。
『チャッター』は、まさにそういう方を含め、ビジネスパーソンにこそ読んでいただきたい一冊です。ご自身の思考パターンや感情に自覚的であること、チャッターに意識を向けてみることが、メンタルヘルス悪化の予防の第一歩になるでしょう。
自分の頭の中のおしゃべりに気づくことができれば、対処法はたくさんあります。ですから、その自覚を得るためにも、本書で、チャッターという誰にでも起きている問題に目を向けて、知っていただきたいなと思います。
(構成:泉美木蘭)
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