業界1位→4位「かっぱ寿司」凋落した2回の転機 会社の問題と業界の問題というダブルパンチ

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今年に入って円安が加速しており、歴史的な数字を記録している。それを受けて、さまざまな業界で値上げが相次ぐ。その波が回転ずし業界にも及び、スシローとくら寿司が税別で一皿100円の値付けをやめ、より高付加価値のメニュー提案に力を入れていくと発表した。その原因を一歩踏み込んで探っていくと、近年の日本の漁獲量激減にたどり着く。

そもそも回転寿司のファミレス化が進んだ要因の1つに漁獲量の低下がある。漁獲量が減ると価格が上がるため、原価に跳ね返ってくる。それは一皿100円が主流の回転寿司チェーンにとって致命傷になりかねない。ただ、一匹の魚をさまざまに活用できたら、その分、原価を下げることが可能だ。そうした課題感からスタートし、ファミレス化につながった背景がある。

なお、2019年に日本は1兆7404億円の水産物を輸入し、2873億円を輸出しているので、完全に輸入超過に陥っている。実際、食用魚介類の国内自給率は56%にとどまり、その多くを輸入に頼っているため円安の影響も受けやすい。サーモンやエビ、マグロなど、回転寿司で人気なメニューも実は輸入に頼っているケースが目立つ。

日本の食用魚介類自給率は6割

かつては日本の食用魚介類の自給率は100%を超えていた。しかし、東京オリンピックが開催された1964年の113%をピークに減少を続け、近年は60%を下回る状況が続く。

漁獲量が減った原因は、漁師の高齢化や収入、地球温暖化などさまざまあるが、一番は獲り過ぎだ。大量に漁獲すると、1匹当たりの魚の値段は下がる。すると、それを補填するために、また大量に漁獲しなければならない悪循環に陥ってしまう。その結果、稚魚まで獲ってしまい、その魚種自体が少なくなってしまう事態となる。

一方で、世界では逆に増加傾向が続く。FAO(国連食糧農業機関)によると、1人当たりの食用魚介類の消費量は過去半世紀で約2倍になった。顕著なのが中国だ。近年、魚の需要が増えており、回転寿司チェーンに対する需要も高い。

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