3つめが、同じくコミュニケーションに与える影響です。
先ほど、マスクをすると、とくに高周波の子音が聞き取りにくくなるというシドニー大学の研究がありましたが、英語の多くが「p」「t」「k」「f」「s」「sh」といった高周波の子音で構成されているのに対し、日本語は子音と低周波の「あいうえお」の母音の組み合わせです。
結果的に、日本語の周波数は、主に125~1500Hz(ヘルツ)に対し、英語の周波数は、750~1万2000Hzで、英語は日本語よりはるかに高周波、つまり、マスクによって遮られやすいということになります。
マスクをすると発声もしづらいし、聞き取りづらいわけですが、英語ほどはひどくはない、ということなのかもしれません。
アメリカでは、マスクは「自由への抑圧の象徴」
4つめが、マスクというものの「シンボリックなとらえ方」です。
アメリカでは、とくに保守派を中心に、「マスクをつける人は権威に盲従する『羊』であり、マスクはイスラムの女性が着用する『ブルカ』のようなもの」ととらえられています。
秘密主義、不信感、貴族的な変装を連想させ、「自由への抑圧の象徴」と考えられているのです。
一方で、日本では、「マスクは、目に見えない脅威や不確実性をコントロールできるという感覚を着用者に与える」(堀井光俊・秀明大学教授の論文「なぜ、日本人は仮面をつけるのか」より引用)もので、「ライナスの毛布」のような「心理的安全性を覚えさせるアイテム」ということになります。
実際に、20世紀初頭のスペイン風邪の流行の際に、アメリカでは、抵抗が大きかったものの、「日本の一般市民は抵抗なくマスク着用を受け入れた」(同)のだそうです。
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