「1時間半で5000円〜7000円と、新卒の給料が12万円ほどの台湾ではちょっと高い価格設定なのですが、インターネットで生徒の募集をかけると、空きコマができてもすぐ埋まるような状態です。
台湾では日本より結婚に対する価値観が多様化しているので、そういう悩みを聞くことが多いですね。台湾はパートナーはいても結婚しない、子ども産まないって人が多く、同性結婚が認められる場合もある一方、親世代は逆に日本より保守的な人が多く、相談できる相手が少ないようで。
その点、私は日本人で、話が外に漏れる心配がない。『自分の知り合いと交流がない、言葉が通じる外国人』というのは、相談相手としてちょうどいい存在なんですよね(笑)。日本語の勉強のための先生というより、精神面で支えてくれるカウンセリングの先生だと喜んでくれる人が増えたのは自分としても想定外でしたよね」
人と違った生き方をしてきた木原さんだからこそ、生徒も話しやすいのだろう。そう伝えると、木原さんはやや照れながらこう続けた。
「生徒さんたちには本当に感謝してもしきれません。最初は『相談を聞いてアドバイスするだけでお金がもらえるなんてラッキー!』といった気持ちでしたが、今では『これが自分の好きなことなんだ』と認識しました。家庭教師という仕事は、自分にとって天職です」
ちなみに、家庭教師の副収入と合わせて、年収は現在700万円ほどだという。だが、日本企業と違い雇用が流動的なこともあり、第三の収入源を築こうと、ここ数年は株式投資にも熱を上げているとのことで、ここでもバイタリティーがスゴい。
他者の悩みと向き合い、自分のQLCも抜けていった
台湾での生活を経済的に安定させるために始めた家庭教師の仕事で、さまざまな人の悩みを聞くうちに、木原さん自身のクライシスも落ち着いてきたという。
「10年後、20年後どうなるかわからない不透明感はありますが、日本の大企業で働く人だってそれは同じだろうし、どうなっても仕方ないと思っている意味では、QLC的な悩みはもうないです」
最後に興味本位で、木原さんのご両親について聞くと、こう語っていた。
「『将来はできれば公務員に』みたいな堅い両親でしたが、留学した頃からは『大企業とかじゃなくても自分の能力を活かせる好きな仕事をしたほうがいいかもね』という態度に変わっていました。
思えば、ネトゲ廃人だった頃から自分のことを信じて応援してくれる親ではあったなと感じています。当時は毎年のようにパソコン壊していたんですが、普通に買い替えてくれていましたからね。
台湾の永住ビザも取得できたので、今後は自分の好きなタイミングで好きなことだけして生きていけると思っています。40歳までに会社勤めを辞めようって考えていて……実はネトゲは今もちょっとやっているんですが、いつか京都に戻って、時間を気にせず没頭したいと思います」
子どもが毎日ずっとゲームをしている……親としては心配に思えるかもしれないが、なにかに没頭できるというのは素晴らしいことだろう。子育てや教育というものの奥深さを感じさせる話だった。
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