「子どもや保護者は、誰が正規で誰が非正規なのかを知りません。だから、たった1年で学校を去ることに驚かれます。私自身、突然のお別れとなってクラスの子に泣かれたこともあります」
首都圏の公立小学校に勤める40代前半の川島和希(仮名)さんは、10年近い教員生活の中で、同じ学校に2年連続で勤めたことが一度しかない。
川島さんは民間企業勤務から教師に転身して10年目を迎える。これまで低学年から高学年まで幅広く担任し、時に若手教員と同じ学年を担当し、指導役も任されるなどしてきた。
だが、川島さんの立場は「臨時的任用教員」(常勤講師)と呼ばれるもの。民間企業でいうところの契約社員のようなものだ。川島さんはもう10年近く、この立場で雇われ続けている。
荒れたクラスを任される
「(正規職員と)同じ内容・責任を負わされるどころか、あえて難しいクラスを任されることもあります。『非正規だから潰れてもいい』と思われているんです」
川島さんは、非正規教員の境遇をそう嘆く。自身も過去に、任される学級がことごとく「荒れたクラス」だった時期もあるという。
「非正規教員は皆、次の年に仕事にありつけるかどうか不安です。だから頼まれた仕事を断れません。悪い評判が立つと困りますからね。その結果、正規教員より多くの仕事を抱え込んでいる人もいます」
川島さんがそう語るように、非正規教員が誰も持ちたがらないクラスの担任を任されたり、面倒な校務を担わされたりするケースは珍しくない。昨今は精神疾患で病休に入る教員も多いが、そうした場合に代役を任されるのも、多くの場合が非正規教員だ。
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