自治体によるDV相談や健康・福祉相談などの住民支援サービスの大半は、不安定で低賃金の非正規公務員が担う。その4人に3人は女性だ。こうした女性たちは、コロナ禍拡大のさなかに一線で住民対応に奔走し、年度末には契約を打ち切られるという「二重の惨劇」に見舞われている。
コロナ禍でも休めないエッセンシャルワーカーの役割が注目され始めたいまも、これら非正規女性公務員たちからの声はなお弱い。そこからは、女性たちの沈黙を生む「会計年度任用職員」という「装置」が見えてくる。
ダブルワークを余儀なくされる非正規公務員
2021年6月、藍野美佳は53歳で、広島県内の自治体のDV相談員をやめた。10年ほど前、夫からDV被害に遭って離婚、シングルマザーとなった。自治体職員は安定し、恵まれた働き方と思われがちだが、DV相談員はみな、短期契約で低賃金の非常勤だった。
DV被害者の支援は、DV防止法、生活保護法、男女雇用機会均等法など多角的な法的知識や支援の専門知識が必要だ。生命の危険にさらされる被害女性たちからは昼夜問わずSOSが入り、加害者の脅しにも直面する。気の抜けない重責にもかかわらず、非常勤の年収は手取り200万円程度だった。
子育てしながらの生活費にはとても足りず、夕方から深夜までファミリーレストランで働き、他の女性相談機関でもアルバイトするダブルワーク、トリプルワークの日々が続いた。それでもやめなかったのは、自らのつらい経験を他の被害者のために役立てたいという強い思いがあったからだ。
だが2020年4月、事態はさらに悪化した。「会計年度任用職員」制度が導入されたからだ。
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