この連載は、コロナ禍であぶりだされた女性の貧困の現場をたどってきた。それらの陰から決まって顔をのぞかせるのは、2020年3月からの一斉休校措置など女性の育児・家事労働を無視した「コロナ対策」と、企業が人件費削減を進める中でのマタハラ解雇といった「労働現場の過酷さ」との挟み撃ちの状況だ。
最終回は、そんな「政策禍」とも見える女性の貧困を、「新しい資本主義」「女性版骨太」政策は解決するのか、を考える。
保育園の一斉休園で子育てに専念、会社は雇い止めに
千葉県に住む長井美千代(仮名、36歳)は、コンピューターで家電などの設計・製図を行うCADオペレーターの契約社員として、県内の中小企業で働いてきた。だが、2020年3月、政府がコロナの感染防止策として突然の一斉休校措置を求め、4歳の娘が通う保育園は休園になった。
長井はテレワークを申請した。だが、CADの仕事は集中が必要で、目が離せない年ごろの子どもの世話をしながら行うのは難しかった。それなら保育園の再開まで休んで子育てに専念したほうが効率的と考え、一斉休校などの際に、保護者に有給休暇を保障した企業に支給される「小学校休業等対応助成金」の申請を会社に頼んだ。会社は申請してくれた。
だが、8月からの契約更新はなく、7月に雇い止めとなった。物流関係の会社のパートをみつけて転職したが、時給は6割弱で月収もほぼ半減した。
ようやく保育園は再開したものの、園児が1人感染するとクラスがすべて休みになる方式なので、すぐまた休園になる。正社員の夫もテレワークができない仕事で、休園のたびに長井が休む。
娘はリズムが崩れ、保育園に行きたがらなくなった。なだめて登園させると24時間働き続けたような疲労感がのしかかり、ぐったりして出社する。「休園措置の2次被害」だった。
そこへ追い打ちをかけたのが「保育園の適正利用について」とする市のお知らせだった。
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