コロナ禍は、フリーランスという働き方が雇用危機にいかに無防備かを見せつけた。「自営業だから」として放置されてきたフリーランスの保護に、政府もようやく乗り出し始めた。
だがコロナ禍による休園・休校でフリーランスの母たちが直面した「小学校休業等対応支援金(以下、休校等支援金)」制度の不備など、その支援策は、多くの女性フリーランスを素通りした。そこには、男性も含む「自営業は自助努力を」という規範に加え、「育児やセクハラは個人の問題」という女性固有の「二重の自己責任」装置があった。
30代女性が休校等支援金の申請をあきらめかけた訳
今年4月、東京都に住むフリーランス、川島ちなつ(仮名、30代)は、「休校等支援金」の申請をあきらめかけていた。
フリーランスの就業実態に合わない証明書ばかりが求められ、近いと思われるものを何とか集めて送ったら、要件に合わないとして差し戻されてきた。しかも、多くのフリーランスには存在しないような書類を追加して送るよう求められたからだ。
フリーランスは演劇、取材、インストラクターなど対面の仕事も多い。コロナ禍の第1波で、こうした分野の仕事はほぼ停止状態になった。だがフリーランスは「自営業」を理由に、コロナ禍による一斉休校で働けなくなった親のために創設された「休校等助成金」から除外された。
追い詰められたフリーランスの親たちのために業界団体や関係労組が政府に働きかけ、「雇用者の半額」ではあるが、フリーランスが自力申請できる制度として「休校等支援金」が設けられた。
こうして登場した支援金は、小学生の子どもを抱える川島には希望の星に思えた。最初の緊急事態宣言が出た2020年4月から5月にかけ、川島がかかわるはずだったプロジェクトも新型コロナの感染防止のため立ち消えになり、収入が途絶えて貯蓄を取り崩す日々が続いていたからだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら