コロナ禍では大量の女性たちが雇用を失い、女性への「就労支援」がようやく労働政策として掲げられはじめた。ただ、そこでは、就労してもすぐ退職に追い込まれ、「ベルトの上を回り続ける回転ずし」のように求職活動を続ける女性たちの現実が欠けている。
背景にあるのは、不安定・低賃金の「半雇用」が多数を占める女性の労働市場であり、子育て無視の働かせ方であり、パワハラやDVなど、そうした構造への疑問を抑え込む「装置」としての女性への暴力だ。
休業手当を受給しても収入は激減
西日本の地方都市に住む清水ちづる(仮名)は2016年、高校を卒業後、アパレル企業の店舗で正社員の販売担当として働いてきた。だが、コロナの感染拡大による2020年4月の緊急事態宣言で、店は休業となった。
額面で月20万円程度の賃金だった清水に、休業手当は月8万円しか来なかった。休業手当は労働基準法で「休業前の平均賃金の6割」と規定されているが、実質4割程度しか支給されない仕組みだからだ。
1カ月後に店は再開したものの、時短営業で賃金は月12万円に落ちた。生活費が足りなくなり、転職先を求めて出向いたハローワークで、コロナの影響を受けやすい販売ではなく物流会社の事務はどうかと助言された。パートだったが契約更新ができ、週5日勤務、手取り月18万円という条件に引かれ、2020年10月、再就職をはたした。
だが、この会社も長引くコロナ禍でイベントや行事の激減に見舞われ、倉庫の利用度が大幅に減り始めた。シフトを減らされ、手取りは月14万円~11万円程度に落ち込んだ。
1人暮らしの家賃と光熱費、食費に加え、地方では必需品の車のローンとガソリン代、さらに携帯電話代などを払うと、毎月赤字になった。親やきょうだいから食料を送ってもらってしのぎつつ、再びハローワークに通った。だが、女性を対象にした求人に、生活できる賃金の仕事はほとんどなかった。
1年近く求職活動を続け、清水は2022年春、ようやく手取り月17万円の大手企業のシステム入力の仕事を見つけたが、待遇は不安定な派遣社員だ。「女性の事務はいま派遣社員しかみつからない。選択の余地はない」と清水は話す。
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