激務の夫を選ぶ、キャリア女性の「自縄自縛」 専業主夫は女性活用の解決策にならない

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キャリア志向の強い女性にとって、「夫選び」は重要(写真 : トラノスケ / PIXTA)
昨年、『「育休世代」のジレンマ』(光文社新書)を発表し、ワーキングマザー界に鮮烈にデビューした中野円佳氏。連載9回目の今回は、現状の日本でキャリア志向の強い女性であっても、夫婦で家事育児分担が妻に偏りがちな理由について考えていきます。
※1回目記事:育休世代のカリスマが、会社を"降りた"ワケ
※前回記事:だから日本の会社では「妊娠できない」!

 

こんにちは、女性活用ジャーナリスト/研究者の中野円佳です。なぜ女性は、結婚・出産といったライフイベントに際し、キャリア形成が困難になってしまうのか。筆者は2つの要因があると思います。

キャリア女性でも、妻の家事育児負担が重くなりやすい日本の現状を取り上げます

ひとつめが前回記事で書いたとおり、日本の会社組織では100%とか120%の力で仕事にコミットすることが求められるという点です。女性が出産後に100%の力で働くことができなくなった場合に、今度は貢献度ゼロ扱いになってしまうという極端なことが、実に多くの企業で起きています。

今回は、ふたつめの要因について詳しく取り上げます。それは、家事・育児分担がまだまだ女性に偏っていることです。

これは、夫が悪い面も、誤った夫を選んだ、あるいは家事分担の交渉をし損ねていたりする妻が悪い面もあるかもしれません。でも、今の日本のカイシャでは、夫婦間で合理的に考えれば考えるほど、妻が家事育児の多くを負担するのが自然になってしまうという状況があるのも事実です。今日はこれについてお話したいと思います。

専業主夫を増やせば女性は活躍できる?

日本人の男性は各国の男性と比較しても家事時間が短いというデータをご覧になったことがある人は多いと思います。その背景として、「性別役割意識の根強さ」だとか「長時間労働と主婦の無償労働で成り立つ、男性稼ぎ主モデル」の存在などが指摘されてきました。

私が研究や取材のメインターゲットとしているのが、高学歴でキャリア志向の強い女性たちということで、よく聞かれる質問が次のようなものです。

〔1〕(一般論として)女性活用を進めたいなら、専業主夫を増やすしかないのではないか
〔2〕(女性個人に対して)どうしてそんなにキャリア志向が強いなら、家事・育児をしてくれる男性と結婚しないのか。あるいは、男性側に融通を利かせられるように交渉できないのか。

 

まず〔1〕の質問をする人は「女性活用を進める」意味について、はき違えているかもしれません。男性で専業主夫になることを選べる人が増えることは価値観や家族の形態の多様化においては望ましいとは思います。男女平等指数も上がるかもしれません。

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