激務の夫を選ぶ、キャリア女性の「自縄自縛」 専業主夫は女性活用の解決策にならない

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女だから家事をしないといけない、男だから稼がないといけないという規範を打ち破る意味では素晴らしいことだと思います。個々の事情により、働けない男性を妻が養えるのであればそういう女性はどんどん増えればいいと思います。ただ、女性活用のためにそれをやるというのはちょっと違うはずです。これまでの専業主婦が負ってきた無償労働の“負の側面”を、男性に押し付けるだけになる面もあるのではないか、と危惧します。

もちろん世の中には経済的に恵まれた専業主婦も多いですが、1人当たりの稼ぎが減っている今、もはや片稼ぎモデルでは成り立たなくなってきています。読売新聞の「人生案内」というコラムをよく読むのですが、さまざまな理由での「離婚したい」という女性の相談に専門家が答える回答にはほぼ100%、まずは経済的自立を確保しましょう」という文言が入っています。

共働きなら夫の家事育児分担は増えてしかるべきと思いますし、対等な分担や主夫、イクメンも増えてきているとは思います。時期により役割や分担割合を柔軟に変えられたらいいとも思います。でも、それまでの女性のポジションに男性を置き換えればいいという「女性活用」は政府も企業も目指していません

労働人口が減少していく、企業のイノベーションには経験や価値観のダイバーシティが必要……という状況に対し、専業主夫を増やすという施策では解決になりません。私も、家族のケア労働から解放された女性が、これまでの「専業主婦の妻がいる男性」と同じような振る舞いをして活躍しても、ケアを抱える人が不利益を被る世界は変わらないと感じています。

政策的に専業主夫を推奨するとなると、個人や世帯にとっては保育園に預けられない0~3歳前後の専業主婦(夫)の育児は、共働き以上に休む暇がなく、大変な面もあるでしょう。主夫からは「公園デビューができなかった」「医者に連れて行ってもお母さんは?と言われる」「PTAは女の世界」といった話も聞きます。専業主夫は女性優位の地域社会に風穴を開けてくれる存在にもなり得るかもしれませんが、専業主婦以上に生きづらい生活が待っているかもしれません。

職場の問題が夫婦間分担を生む

それでは、〔2〕についてはどうでしょうか。

個人レベルで見たときに、キャリア志向の女性たちは仕事で活躍したい意識が強いにも関わらず、配偶者選択(mate selection)の際になぜ家事育児をしてくれる夫を選ばないのか、あるいは結婚後の交渉(post-marital socialization)として家事育児をしてくれるように交渉できないのでしょうか。

結論を先取りして言うと、「キャリア志向が強いからこそ」そういう夫を選ばない、そして交渉できないという実態があると私は考えています。

まず、配偶者選択において、一般的に日本でも諸外国でも現在、同等の学歴を持つ者同士が結婚する「同類婚」が趨勢を占めています。年齢や学校名まで入れると、若干の「上方婚」(=妻より夫の学歴や年齢がやや高い)が多いです。これは、出会いの「機会」の問題、そして価値観が合うかどうかという「性向」両方から説明できると思います。近年の結婚の傾向について詳しく知りたい方は橘木俊詔・迫田さやかさんの『夫婦格差社会』や筒井淳也さんの『仕事と家族』などが詳しいです。

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