コロナ禍では、保健所や、医療・保育・介護サービスなど命と労働を支えるライフライン職場が危機に陥り、これを支える女性資格職たちが、極端な過重労働にさらされた。
国連開発計画(UNDP)は、貧困を「教育、仕事、食料、保険医療、飲料水、住居、エネルギーなど最も基本的な物・サービスを手に入れられない状態のこと」と定義し、生存だけでなく健康で文化的な最低限の生活を奪われた状態も含めている。
彼女たちを襲ったのは、こうした「最低限の生活の貧困」だった。その背景に、コロナ以前からの行政改革による公共サービス部門での人員不足と、それらを容認させた「女性が多い仕事の軽視」という装置がある。
統廃合によって保健所の数は大きく減少
厚生労働省の調査によると、保健師、看護師、保育士は9割以上介護分野でも、施設職員は7割、訪問介護では9割近くが女性だ。
大阪府内の保健所で働く40代の保健師、今井千枝(仮名)が働く保健所も女性が多く、子育てと仕事をぎりぎり両立させてきた職員も少なくない。2020年、コロナ禍がそんな職場を襲った。
1980年代の「行革臨調」以来の公務員削減のなか、1994年に「保健所法」が「地域保健法」に改正されて統廃合が促進され、保健所の数は全国的に減らされていた。
大阪府でも、2000年に61あった保健所数が2020年には18に減り、人口10万人あたりの保健師の数は27.7人と、全国2番目の少なさになった(厚労省調査)。以前からぎりぎりの人手で回してきた職場で、コロナ禍が第2波、3波と続き、残業は恒常的になった。
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