「保育士や母親を支える政策は男性が多数を占める行政の中枢から軽視され続けてきた。でも、保育園が子どもをいっさい預からなくなったら保健師も看護師も働けず、ライフラインはもたない。コロナ禍がそれを明らかにした」と町田は言う。
町田の実感は、思いすごしとはいえない。保健師、看護師、保育士、介護士のような、住民のケアを担う公的な資格職を「家庭の主婦がタダでやっているような女性の仕事」として軽視する発言は、筆者の取材でもしばしば聞かれるからだ。
だが、2021年12月に発表された「過労死等防止対策白書」は、肉体的負担が大きいと感じる割合は男性より女性が高く、「医療業」「社会保険・社会福祉・介護事業」は「平時から他の業界と比較して高い水準にあったところ、令和2年4~5月は以降、平時よりさらに上昇し、令和3年1月には一層上昇」と指摘している。
資格職なのに低賃金で人手不足
そうしたなか、岸田政権は2021年11月に「新しい資本主義」の政策の一環として保育士や幼稚園教諭、介護・障害福祉職員などを対象に、収入を3%程度(月額9000円)引き上げるための措置を2022年2月から実施することを閣議決定した。
コロナ禍での感染不安や過重労働に加え、介護分野の職員、保育士は賃金でも全産業平均を大きく下回り、その結果、人手が集まらず、介護事業者からは閉鎖の懸念まで指摘されていたからだ。
だが、この日に開かれた介護労働者による財務省・厚労省との交渉では、「この程度の引き上げでは全産業との格差は縮まらない」「介護報酬を抑制すれば介護保険はもつかもしれないが、人手不足で介護はつぶれる」との声が相次いだ。
非正規比率が高い保育士や介護士に対し、同じ過酷労働にさらされつつも、保健師や看護師の正規比率は8割台(2020年、厚労省調査)を保ち、平均賃金も全産業平均を上回ってはいる。だが、コロナ禍でのワクチン接種を理由に、その看護師にも2021年、医療現場での派遣労働が期限付きの特例ではあるが解禁され、今後の不安定・低賃金化が懸念されている。
第1回:「夫セーフティネット」崩壊が突きつける過酷現実
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第4回:コロナ禍で社会支える「非正規公務員」悲惨な待遇
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