「女の仕事と軽視」保育士語るコロナ禍の異常労働 住民のケア担う資格職なのに人手不足で低賃金

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若い職員の負担も重くなり、持病の子宮内膜症が悪化し生理が止まらなくなった職員もいた。生理休暇は取れない。咳が止まらない、発疹が出るといった体調不良も続発していたが、自分の体調管理どころではなかった。何より、いつまで続くのか見通しが立たないことがつらかった。第6波が来たらもう続けられない、と思った。

2022年2月、その第6波が来た。大阪市では、新規感染者のシステム入力が他の自治体と比べて突出して遅れ、対応しにくくなっていることが報じられた。感染拡大による病床逼迫の中で市が、高齢者施設に、救急車を呼ばずに保健所に連絡するよう文書を出していたことも伝えられた(『医療ひっ迫の大阪市が高齢者施設に「救急車より相談窓口へ」と促した文書入手「電話つながらない」と困惑』(AERA dot.))。

今井の残業は増え続け、子どもの一人が不登校になった。

責任は現場に依存、休めない保育士

2020年11月に開かれた「第4回自殺総合対策の推進に関する有識者会議」議事録によると、過去5年平均と比べた女性の自殺者の増加幅で「医療・保健従事者」は上位6業種に入り、同年7月からの「コンスタントな増加」が指摘されている。

そんな苛酷な状況にもかかわらず、2021年9月、大阪府内の病院のベテラン看護師は、筆者の取材にこう語っている。「コロナ禍でいらだつ患者さんたちからの暴言も増えた。でも、それはこちらの手が回らず、十分なことができていないせい。患者さんに申し訳ない」。

家族を抱え、生理休暇も必要な女性たちに支えられているライフライン職場には、平時から、担い手の実態に見合ったゆとりある人員配置が必要なはずだ。だが、この看護師のような資格職の使命感に依存する形で、そうした措置は不十分なまま、コロナ禍が襲った。その後の現場の増員要求にも対応は鈍く、病床逼迫も、「保健所に」「病院に」と丸投げされたことが、証言から見えてくる。

これらの背景に、「女性がする仕事への軽視がある」と語るのは、東京都内の私立保育園で働く55歳のベテラン保育士、町田ひろみだ。

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