コロナ支援策「女性フリーランスは素通り」の悲痛 実態に合わない助成要件、はびこる自己責任論

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「休校等支援金」の要件が実態に合わないのは、「労働時間の把握」など、どんな働き手にも必要なはずの生活や健康を守る仕組みが、フリーランスに見合う形で整備されてこなかったからともいえる。

女性の場合には、ここに「家計補助論」の壁が加わる。「休校等支援金」が雇用者の半額とされたとき、フリーランス協会が「休校理由でお仕事を休業している方の大半が女性であり、家計の担い手ではない」などの「実態を確認」し、これらを「総合的に勘案すればフルタイムの会社員と同等の休業補償はtoo much」(2020年3月17日付「フリーランス協会」ブログ)とする見解を表明したのは、その一例だ。

そんな公助の不足は、ハラスメント防止の弱さにもつながる。2019年、日本マスコミ文化情報労組会議フリーランス連絡会や日本俳優連合、フリーランス協会などが行ったフリーランスへのハラスメント共同実態調査では、自由記述欄に「妊娠を告げたら仕事を切られ代行者を用意するよう言われた」(スポーツインストラクター)、「仕事をしたいなら妊娠するなと言われた」(プロデューサー)など、多数のマタハラが報告された。また、回答者の3割がセクハラ被害を訴え、レイプもあった。

にもかかわらず、マタハラを規制する育児介護休業法などは労働者が対象で、2020年6月から施行されたハラスメント防止関連法によるセクハラの規制強化策もフリーランスは対象外となり、「配慮が望ましい」という指針にとどまった。

仕事を口実に繰り返されたセクハラ行為

フリーランスのウェブライター、本田英子(仮名、20代)の体験は、こうした「自己責任の束」の怖さを浮かび上がらせる。 

国内初の新型コロナウイルス感染者が確認された2020年1月16日、本田は都内の心療内科に足を運んだ。セクハラによる重い抑うつ状態に陥っていたからだ。

本田によると、発端は前年の2019年3月。ホームページの連絡先に、エステ会社の経営者という男性から、自社のPR記事を書いてほしいとの依頼が来た。やがて、ほかの仕事は断ってその会社の専属になり、ホームページ向けの執筆や閲読順位を上げる対策を担当してほしいと誘われた。

その間、仕事を口実に体にさわるなどのセクハラ行為が繰り返された。当初、仕事はほめられていたが、報酬の支払いを持ち出すと一転、「仕事の質が低い」などと叱責されるようになり、以後2カ月分の報酬は払われないまま同年10月、体調を崩し、契約を解除した。

この間、「フリーランスでやっていくには男を手の平で転がせるようにならないと」と打ち合わせのたびに言われ、セクハラ行為などを外部に訴える気力は削がれていた。だが、ほかの仕事を断ってしまったため収入はなく、未払い報酬の回収を求めて行政の労働相談窓口に出かけた。フリーランスは労基署や労働局による相談の対象外と言われ、労組を紹介された。その励ましで、会社に報酬の支払いを請求し、2020年1月の通院にもこぎつけることができた。

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