コロナ支援策「女性フリーランスは素通り」の悲痛 実態に合わない助成要件、はびこる自己責任論

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だが、「休校等支援金」は申請できずに終わった。壁は、「業務委託契約等の締結日は学校休業等の開始日よりも前の日でなくてはいけない」という支援金のルールだった。

口約束が多い業界で、契約書を交わさない仕事も多い。短期の助っ人業務などは、休校の最中に急に依頼が来ることもあり、「休校前の契約」という条件は実態に合わない。コロナ禍で仕事自体がなくなったから働けないのに、「休校が原因の支援金」の対象になるのか、という懸念もあった。

第2波以降は仕事が戻り始め、今年の年明けごろ始まった第6波では、川島も「支援金」を申請した。だが、冒頭のように、差し戻されたばかりか業務遂行予定日がわかる「シフト表」や「3カ月分の報酬の明細」「発注者が業務の取りやめを承諾したことが確認できる書類」が追加請求された。

取引先の電話1本で拘束期間が決まる働き方が多く、「シフト表」など見たことがなかった。「3カ月分」と言われても、報酬はプロジェクト単位で一括払いの場合もあり、入金が毎月あるとは限らない。売り上げ台帳なら出せるが、これも要件に合わないと突き返されるかもしれない。業務取りやめも電話1本による通告が多く、仕事を発注してもらう立場で取引先に面倒な書類を要求することは気が引けた。

これらの証明書を工夫して調達したとしても、裏付けられそうなのは月に8日程度。支給額も雇用者の半分。追跡できるよう書留などでの郵送が求められるが、その費用は自分持ち。手元に残る額はわずかだ。

役に立ったのは複雑な書類なしで個人事業主に上限100万円まで支給された持続化給付金だったが、これは不定期で、長引くコロナ減収を支え切れない。「母親支援にはほど遠い」と川島は言う。

自由に働けるから不安定はしょうがない?

このような訴えに、会社員からは「やりたい仕事で自由に働けるんだから、不安定なのはしょうがない」という反発がしばしば起きる。NPO法人「映画業界で働く女性を守る会」を立ち上げたフリーランス、SAORIも、そうした光景を目にしてきた。

だが映画業界で働くフリーランスは、「やりたい仕事で自由に働く人」というより、「複数の会社をまたぎ、不定期な労働時間で働くことを求められる業界で働く人」に近い。

身一つで働く点では会社員と変わらないのに、会社員のような労働時間保護はない。求められれば365日24時間でも働き続け、固定給制度のために時給ベースでは最低賃金を下回ることもしばしばだ。

そんな「究極の自己責任」の世界には、産休手当や育休手当もない。その結果、この業界には出産を機にやめる女性も多く、技能のあるベテラン女性が育ちにくい。「NPOを立ち上げたのは、女性のフリーランスが働き続けられる労働環境をつくりたかったから。それは女性以外の人にも持続可能な働き方を実現させる」とSAORIは言う。

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