コロナ禍で社会支える「非正規公務員」悲惨な待遇 女性たちを沈黙させる「会計年度任用職員」

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会計年度任用職員たちによれば、制度の導入後、藍野のようにしてやめていく女性たちは増えているという。背景には、先に述べた「1年有期の法定化」から来るあきらめと、「女性軽視」の二重の壁がある。

公務サービスは住民の基本的人権にかかわるものが多い。このため安定したサービスの提供が求められ、恒常的な仕事は常勤が行うことが原則とされてきた。にもかかわらず、恒常的な職務に就く非正規をここまで円滑に増やせたのは、「女性は夫の扶養があるから安定雇用は必要ない」という偏見に便乗することができたからだ。

例えば、2021年度末に再任用を拒否され、奈良県の人事委員会に不服申し立てをした会計年度任用職員の女性は、上司から「世帯主でないから退職してもらう」と面と向かって言い渡されている。「夫の扶養」を前提に低待遇で雇い、雇用を打ち切るときも「夫の扶養」が理由にされる。そんな、真綿で首を絞めるような社会の圧力が、女性たちの沈黙を生む。

相談支援など第一線の仕事は、コロナ禍でも休めない住民の命綱だ。だが、これらの仕事のほとんどが非正規職員に担われてきた結果、決定権を持つ正規職員や管理職はその現場を知らず、改善を訴えても理解してもらえない。それでも声を上げると、1年有期を理由に契約を打ち切られることも少なくない。

「マタハラの合法化」といえる状況も

「1年有期」の合法化という沈黙の装置は、「マタハラの合法化」といえる状況も強めた。2020年度末には、神奈川県庁で10年間福祉関係の専門職として働いてきた会計年度任用職員の女性が、5月初旬の出産を間近に控えて3月末の雇い止めを通告された。3月末から産前休暇に入り、産休・育休を取得して職場復帰できるはずが、1年有期に阻まれた形だ(『神奈川県の非正規公務員に対する「マタハラ」雇止め問題~法的課題を中心に~』参照)。

同じころ、東海地方の学校で働いていた会計年度任用職員が、出産を前に雇い止めを通告されたという報が入った。取材を申し入れると、雇い止めは一転、撤回された。1年有期の法定化が招いた安易なクビとしか思えない対応だ。

相次ぐ女性非正規たちの惨状に、2021年3月、当事者たちが「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」を結成した。7月に「はむねっと」が発表したオンライン緊急アンケート結果では、1252件の有効回答のうち、年収200万円未満が5割を超え、勤続年数も3年未満が4割を占める不安定ぶりが明らかになった。

そんな働き方のなかで、45.8%がメンタル不調を訴え、93.5%が将来への不安を感じると回答。「契約の更新時が来ると、仕事がつながるかどうかの不安でメンタル不調が激しくなる」という声もあった。

しかし、同年7月から総務省が全地方自治体を対象に実施した初のメンタルヘルス調査で、非正規公務員は対象から事実上外された。

調査は、コロナ禍による業務量、住民のクレームの増大などによる公務員の心の不調対策を目指し、第一線に立つ機会が多い会計年度任用職員にこそ必要だったはずだ。非正規も加えることを求めた「はむねっと」の要望書に総務省は、今回の調査は「自治体の事務負担を考慮し、まずは首長部局の正規職員を対象としたもの」とし、再度行うときは改めて検討する、と文書で回答した。

こうした排除の一方、同年末のボーナスでは、非正規を正規並みに削減する自治体が相次いだ。コロナ禍による民間の引き下げに合わせ、人事院が国家公務員のボーナス0.15カ月分の引き下げを勧告したことに合わせた措置だった。低賃金で期末手当の実額が少ない非正規にとって引き下げの打撃は大きく、正規との格差もさらに広がる形となった。

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