コロナ禍で社会支える「非正規公務員」悲惨な待遇 女性たちを沈黙させる「会計年度任用職員」

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そんな「女性非正規公務員の沈黙」は、住民にも返ってくる。

千葉県習志野市でも2020年4月、非正規職員が会計年度任用職員に転換された。約400人は1日7時間45分の「フルタイム」職員だったが、このうち約200人が、一律1日7時間、週35時間の「パート」に仕分けされた。

1年契約を反復更新し、20年近く相談支援業務にあたってきた小川さやか(仮名)も、1日7時間45分のフルタイム契約から、「パート」に切り替えられた。「パート」では退職金の対象にならない。加えて、フルタイムのときは正規と同じ共済保険に加入できたが、パートは共済保険に加入できず、健診などが受けられなくなった。

それ以上に困るのは、7時間という契約のため、役所は午後5時15分まで開いているのに勤務は午後4時30分まで、となったことだ。相談に来た市民に「勤務終了時間なので打ち切ります」とは言えない。残業が恒常化して残業代の申請がしにくくなり、労働時間の減少とあいまって、年収は約50万円減った。「職員のことも市民のことも考えずに『パート化』をやってしまったせい」と小川は言う。

総務省は「制度の趣旨に合わない」

これらの矛盾の指摘に、総務省も「財政上の制約のみを理由にフルタイム雇用を抑制するのは制度の趣旨に合わない」という趣旨の通知を出した。これを生かし、労組による交渉や市議会の質問での是正要求が相次いだ。

市は、コロナで通常の業務量が判断できないので「不適切なパート」かどうか判断できず、すぐフルタイムに戻すのは無理としつつ、「今後、制度の見直しも含めて検討していく」と答えている(2021年3月市議会での総務部長答弁)。

大阪府摂津市では2022年1月、前年に起きた児童虐待問題の報告書が発表された。ここでは、専門性が必要な職務なのに「虐待対応を担う職員は1年目から3年目が多くを占める体制だった」と指摘された。こうした部署にも1年有期の会計年度任用職員は配置されていた。

関東地方の自治体の労組役員は「『会計年度』で募集すると応募はさっぱり。『常勤』に変えるとどっと来る。1年でクビと知っていて応募しますか?」と言う。

女性非正規公務員たちを沈黙させてきた「装置」のツケは、広くて重い。

第1回:「夫セーフティネット」崩壊が突きつける過酷現実
第2回:夜の街で働く女性襲う「個人事業主扱い」横行の罠
第3回:妊娠した技能実習生に「官製マタハラ」の冷酷現実

竹信 三恵子 ジャーナリスト、和光大学名誉教授

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たけのぶ みえこ / Mieko Takenobu

東京生まれ。1976年、朝日新聞社に入社。水戸支局、東京本社経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)などを経て2011年から和光大学現代人間学部教授・ジャーナリスト。2019年4月から現職。著書に「ルポ雇用劣化不況」(岩波新書 日本労働ペンクラブ賞)、「女性を活用する国、しない国」(岩波ブックレット)、「ミボージン日記」(岩波書店)、「ルポ賃金差別」(ちくま新書)、「しあわせに働ける社会へ」(岩波ジュニア新書)、「家事労働ハラスメント~生きづらさの根にあるもの」(岩波新書)など。2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞。

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