それを証拠に、かつて臨時的任用教員には「空白の一日」と呼ばれるものがあった。雇用契約を4月1日から3月30日までとし、31日を空白にすることで、雇用をいったん区切るというものだ。この一日のために年金・保険の切り替えが必要となることから極めて悪評が高く、今から5年ほど前に改められた。
しかし、今も類似する問題は残されている。一部の自治体では、臨時的任用教員の勤務開始日を4月1日からではなく、「4月5日から」「入学式当日から」などとし、4月分の諸手当を支給しないようなケースが存在するのだ。新たに担任を受け持つ非正規教員からすれば、入学式前からの準備は当然必要だ。実際、「交通費も自腹を切って4月1日から出勤していました」(川島さん)というように、勤務開始日前に出勤せざるをえない教師もいる。
非正規教員は年度途中からの勤務を打診されることも珍しくない。さらには、育休や病休から正規教員が復帰する関係で、年度途中で契約が途切れることもある。最悪の場合は3学期の途中、年度末ギリギリで学校を去ることもある。
卒業式の日に一緒にいられない
首都圏の小学校で臨時的任用教員を務める40代半ばの奥野美穂(仮名)さんも、そんな経験をした人の一人だ。退任日は3月15日。年度末のフィナーレを迎える段階で、いきなり幕を下ろされてしまった。
「3年生のクラスでしたが、私が3月15日でお別れになると伝えると、混乱して泣き出す子もいました。当時、同僚や保護者が校長に『奥野先生が年度末までいられるよう、教育委員会にかけ合ってください』と訴えてくれましたが、結局はだめでした」
奥野さんは当時をそう振り返る。結局、奥野さんは卒業式にも終業式にも参加せず、学校を去った。年度途中からの雇用契約とわかっていても、立場の弱い多くの非正規教員は断ることができない。断れば、次の年に仕事にありつけないという失業の恐れをつねに抱えているからだ。
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