藤井聡太が将棋界にもたらした「史上空前」 コンピュータが名人に勝つ時代に起きたこと

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子どもたちの前で谷川浩司九段(手前)と模範対局する藤井聡太六段(奥右は杉本昌隆七段=4月14日午後、神戸市 写真:共同通信社)
快進撃を続ける藤井聡太六段15歳。空前の将棋ブームに日本中が沸く中、将棋ソフトが名人を破るなど「コンピュータが人間を超えた」という現実も明らかになっている。『藤井聡太はAIに勝てるか?』を著した将棋ライターの松本博文氏が天才の誕生とコンピュータの進化で揺れる棋界の今をお届けする。

「史上空前」の連続

「藤井君は、羽生さんを超えられますか?」

「藤井君は、AI(人工知能)に勝てますか?」

「史上空前」とも称される将棋ブームの中にあって、この1年ほどの間、筆者が繰り返し尋ねられてきた質問である。これこそがまさに将棋に興味を持つ人々の関心を集約した問いだろう。

「空前」という言葉は、以前に先例がない、ということを意味する。

現在の日本の将棋は、400年の歴史を誇る。歳々年々、数え切れないほど多くの人々が、この世界一面白いゲームに親しみ、遊んできた。その間、9×9のます目の将棋盤の上では、40枚の駒によって、万華鏡のように数え切れないほどの局面が生じた。盤上も盤外も、つねに新しい何かが起こる。それが将棋界というところである。

長い歴史の間に幾人かの天才が現れ、盤上、盤外で鮮烈な印象を残すとともに、数々の大記録が打ち立てられた。それでも、めったなことでは「史上空前」ということは起こりえない。

しかし最近、その「史上空前」のことが、立て続けに起こった。枝葉末節な点においてではない。将棋界のど真ん中の、メインストリームにおいてである。

最も重要なトピックのひとつとして、コンピュータ将棋ソフトの発展が挙げられる。コンピュータは実質的に、すでに何年も前から、人間のトップの技量を、はるかに凌駕していた。そして現在も、青天井と表現されるほどに、果てしなく進化を続けている。

これだけ圧倒的な実力者(コンピュータは「者」ではないが――)が「名人の上」に君臨し続けることは、字義どおり史上空前のことである。

その厳然とした事実のもとで、人間の世界ではどんなことが起こったか。

2016年から2017年にかけての一連の「ソフト指し不正疑惑騒動」は、いくつもの意味で将棋界に前代未聞の深刻な衝撃を与えた。

人間とコンピュータ将棋ソフトの真剣勝負は、2017年、ついに最終段階ともいえる状況を迎えていた。人間中の最強者であり、将棋400年の歴史の象徴である、名人が参戦したからだ。そして、最後と銘打たれた舞台で、佐藤天彦名人はコンピュータの前に敗れた。

コンピュータが名人を超す。従来、それは夢物語であった。しかし振り返ってみれば、予定されていた未来のようでもあった。私たちは今、未来の世界を生きている。

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