新たな天才の登場は、世間を明るくしてくれる。人間の新たな可能性を見せてくれるからだろう。
昨年、史上最年少でプロ棋士となり、デビュー後に29連勝してプロ将棋界の連勝記録をいきなり塗り替えた藤井聡太四段もそうした天才の一人だ(編集部注:筆者である山崎元氏はアマ四段)。
ことに、日本将棋連盟にとっては、世間の前向きな人気を集めている藤井四段は救世主のような存在だろう。というのも、昨年、将棋を題材にした映画『聖の青春』が公開されるなど、せっかく将棋を普及するにあたって絶好の条件を持っていながら、三浦弘行九段の「スマホ使用疑惑問題」を適切に処理できずに、大きくイメージをダウンさせたからだ。
もちろん、今後の藤井四段の活躍の具合によるのだろうが、今後、かつてプロ将棋の公式7大タイトルを全冠制覇した羽生善治氏の「羽生フィーバー」(7冠制覇は1996年)的なブームが起こってもおかしくない。藤井四段の連勝記録は現在も更新中だし、タイトル戦に登場してもおかしくない強さを見せている。そして、同時に、突出して若い14歳の中学生なのだ。人気が出ないはずがない。
今回は、久々の明るい話題である藤井四段の活躍から、われわれとひいては日本経済が学ぶべき「3つの教訓」を引き出してみたい。
【教訓その1】AIは利用する「ツール」
1つ目は人工知能(AI)との付き合い方だ。藤井四段は、プロ入りを決めた直後には、詰め将棋の解図が得意であることから最終盤は強いだろうが、序盤に難があるかもしれないとの評判だった。
ところが、デビューして公式戦を戦うようになってみると、最新の流行型とは少し異なるものの、バランスの取れた少々古風に見えかねない形から、攻めに転ずると一気に加速する、ちょうど強い将棋ソフトが指すような将棋を指しており、序盤・中盤・終盤のすべてに万遍なく強いのではないかと思えるような万能ぶりを見せている。
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