また、人間同士で言うなら、ソフトを相手に恋の駆け引きを学んで大恋愛を成就させるような人がいてもいいだろう。(1)適切な目的を設定して、(2)こだわりなくAIを使うこと、の有効性を藤井四段の活躍は示しているように思う。
【教訓その2】天才は早くから特別扱いしよう
藤井四段は、現在14歳だが、大人のプロ棋士達と互角の条件で勝負をして成果を上げつつ、強くもなっている。彼が情熱と適性の両方を持っていた世界が、若年者にも門戸を開いている将棋の世界だったことは幸運だったといえるだろう。
幼稚園児時代の6歳の誕生日に「おおきくなったらしょうぎのめいじんになりたいです」と書いた子どもは、すくすくと才能を伸ばして、14歳でプロ棋士となって、世間に明るい話題を振りまいている。
では、数学や語学、あるいは経済学でもいいが、興味を持って大才を示す子どもがいたらどうすればいいか。研究に十分な学力があれば、10歳でも12歳でもさっさと大学院に入れてしまい、思い切り研究させるといいのではないだろうか。
芸事やスポーツの世界では早期の英才教育の効果が明らかだが、学問や技術、ビジネスの世界でも同様ではないだろうか。
「将棋でいうと藤井君のように」才能を持っている子どもは、その才能をできるだけ早く伸ばさないともったいない。世間も文部科学省もそう思うようになるといい。そうでないと、本人にとっても、社会にとっても損失だ。藤井四段の存在は、柔軟な「飛び級」の重要性を教えてくれているように思う。
【教訓その3】基礎トレーニングの重要性
あたかも将棋ソフトのように、相手の玉の寄せに至る「道なき道」を鮮やかに切り開いて勝ちを収めている藤井四段だが(以前の電王戦で三浦九段に完勝したコンピュータソフトの「ponanza」の寄せを思い起こさせる)、プロの将棋対局の場合、将棋ソフトに指し手と局面の評価を学んだからといって、それを実戦に生かすには個々の局面では自力で「読む力」が必要だ。
この「読む力」という点において、藤井四段は同業者の間で圧倒的な信用があるはずだ。「デビュー以来29連勝」(しかも現在継続中)もすごいが、藤井四段の場合、真にすごい実績は、詰将棋解答選手権の3連覇だろう。詰将棋の解答力と実戦の将棋で手を読む力は少々異質だが、そもそも共通点は多い。そして、将棋の勝負が決着する最終盤では両者の一致率が拡大する。
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