日銀の前途に影を落とす「当座預金」の付利増大。すでに消費税1%分を金融機関に払い、ETF運用益で穴埋めの実態とは

日本銀行は6月16、17日の金融政策決定会合で政策金利(無担保コール翌日物)を0.5%に据え置いた。国債買い入れについては、市場の安定に配慮し、減額幅を2026年4月以降、縮小することを決めた。
利上げは見送ったが、経済・物価の状況に応じて利上げを続ける姿勢を改めて示した。現状では名目金利からインフレの影響を差し引いた実質金利がマイナスを続けるなど極めて低いためだ。
記者会見で植田和男総裁は、海外情勢の不確実性の高さと物価の下振れリスクを強調。次の利上げタイミングは見通しにくいが、この先、利上げが進む段階で火種となりかねないのが「預金準備率」だ。預金準備率とは金融機関が預金残高の一定割合を日銀の当座預金に預ける際に日銀が設定した割合のことで、準備預金制度に基づいて決められている。
記者会見で筆者が預金準備率の見直しについて質問したところ、植田総裁はこう断言した。
「準備率の変更を検討することは考えていない」
金融機関に巨額の利息支払い
なぜ利上げに預金準備率が絡むのか。
日銀は2024年3月に大規模緩和を解除し、政策金利をマイナスから0.1%、0.25%(同7月)、0.5%(2025年1月)と段階的に引き上げてきた。この過程で膨らんできたのが、金融機関に対する利息の支払いだ。2024年度の決算で1兆2517億円に上る。
金融機関に利息を支払うのは、現在、それが金利誘導の手段となっているためだ。
金融機関が日銀に預ける当座預金のうち「所要準備」(5月時点13兆円)は金利ゼロだが、それを超える超過準備をはじめ対象額(同508兆円)に政策金利と同じ0.5%を付利している。

かつて金融機関は日銀当座預金に預けても金利ゼロのため、所要準備ギリギリの額を預け入れ、残りの資金を銀行間取引市場などで運用した。日銀は市場に資金を供給・吸収することで金利を誘導していた。
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