藤井聡太四段の活躍に学ぶべき「3つの教訓」 将棋の天才が教えるAI競争時代の生き残り方

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どうやら、デビュー後に、公式戦を勝ちながら強くなっているようだ。普通は「負けて(研究するから)強くなり、勝って自信をつける」と言われていた将棋の世界にあって、異様に効率的な進歩を遂げているようなのだが、インタビューの記事などを総合すると、序盤・中盤におけるソフトウエアの局面に対する評価点を参照して研究しているようだ。

たとえば、連勝記録更新の翌日の読売新聞(6月27日、朝刊)には、将棋ソフトが示す局面と手の数値評価について、「その数字を使って、序盤の指し方や考え方を磨いた」と話している。

「序盤もソフトに学ぶ」という新しいアプローチ

これまで、手の選択肢が狭まってきて、詰むか・詰まないかが重要な終盤の指し手を考えるにあたって将棋ソフトの強さが認識されて、タイトル戦の控え室などで詰みの有無の判定にソフトを使うようなケースがあったが、「強いのだから序盤もソフトに学んでみよう」というアプローチは少なかったように思う。

また、将棋の伝統、経験を踏まえた感覚といったものにこだわりを持って、研究にソフトを使うことを嫌うプロ棋士も少なくなかった。

言うまでもなく、プロ棋士同士の勝負は、人間と人間とが機械やソフトの助けを借りずに戦うのであり、その勝負で勝つことが目的なのだ。研究の方法や将棋ソフトの使い方は人によってさまざまであっていいが、「自分が実戦で強くなるために使う」という適切な目的を持って使えばソフトは強力な武器になる。

しかし、プロ将棋界には、棋士対将棋ソフトの対決を見世物にしておカネを稼ごうとした一時期があった。そこで、将棋ソフトが「人間が戦うべき相手」として不適切に位置づけられて、「ソフトには負けたくない」「ソフトの指す将棋には心がない」といった、無用のこだわりを持つ棋士が生まれたのではないだろうか。

今後、将棋以外の分野でも、AI、ロボットなどが進歩していくことになるだろう。自動車の自動運転は実現に近づいているのかもしれないし、法律相談、教育、医療、介護などがAIとロボットに相当程度置き換わるような事態があっても構わない。

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