有名企業で不祥事が続く「根本原因」は、ただ1つだ 「組織マネジメントの素人」が経営した結果…?

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カルチャーとは、たとえて言うなら、組織の「土壌」である。健全で良質な「土壌」があってこそ、組織で働く人たちの「能力(ケイパビリティ)」が育ち、十分に発揮される。

(出所:『「カルチャー」を経営のど真ん中に据える』)

日本企業はこれまで「人を大切にする」とは言ってきたが、人が働くうえでの「土壌」となる「カルチャーを大切にする」とは明確には言ってこなかった。というよりは、「健全で良質なカルチャーは自然発生的に生まれてくるものだ」と高をくくっていたというのが正しいかもしれない。

その結果、「カルチャー」は経営上の重要なテーマとしては取り上げられず、経営陣の間で真剣に議論されることもなかった。「健全で良質なカルチャー」を育むための施策が講じられることもなかった。そのツケとして表出したのが、大企業によるさまざまな不正や不祥事である

「組織風土」の問題は、なにも不祥事を起こした一部の大企業だけに限ったものではない

不祥事にこそ至ってはいないものの、調査報告書で指摘されているような「上にものが言えない、風通しが悪い、当事者意識がない、内向き、やらされ感、事なかれ主義、言ったもん負け……」といった「症状」は、じつに多くの企業で発生している

現場で問題が起こる根本原因は「組織風土の劣化」

「組織風土」が劣化した会社は、「ファイティングポーズ」をとろうとしない。そんな会社は、問題解決ができない

何か問題が起きても、見て見ぬふりをしたり、逃げようとしたりする。問題と真正面から向き合おうとせず、「臭いものにふた」的にごまかし、意図的に隠そうとさえする。その最たる例が、冒頭で取り上げたような、大企業で相次ぐ不正・不祥事である。  

品質検査不正の連鎖、相次ぐシステム障害などは、現場が目の前の問題と真正面から向き合おうとせず、「ごまかそう」「隠そう」「逃げよう」とする姿勢があらわれたものである。

しかし、こうした状態を「現場の問題」と矮小化して捉えてはいけない。なぜ現場は目の前の問題をごまかし、逃げたり、隠したりしようとするのか。それは組織全体を覆う空気感や雰囲気、つまり「組織風土」に原因がある

いつどこで同じような不祥事が起きても不思議ではないくらい、日本企業の組織風土は劣化し、傷んでいることを認識しなければならない。

日本企業が再生・復権するには、「カルチャー」を経営のど真ん中に据え、「健全で良質なカルチャー」を創造しなければならない。日本企業が再生する道はそれしかない。 

遠藤 功 シナ・コーポレーション代表取締役

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えんどう いさお / Isao Endo

早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。2005年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。

2020年6月末にローランド・ベルガー日本法人会長を退任。7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動。多くの企業のアドバイザー、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。良品計画やSOMPOホールディングス等の社外取締役を務める。

『現場力を鍛える』『見える化』『現場論』『生きている会社、死んでいる会社』『戦略コンサルタント 仕事の本質と全技法』(以上、東洋経済新報社)などべストセラー著書多数。

 

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