日中間の4つの基本文書
戦後の日中関係は、いくつかの重要な画期が見られた。その中でも最近の重要な画期は、2014年11月の日中首脳会談であった。それは、それまで尖閣諸島をめぐり摩擦と緊張を高めていた日中関係を、緊張緩和と安定化へと向かわせる契機となった。
2014年11月10日、日本の安倍晋三首相が中国の習近平主席との首脳会談を行い、その結果「日中関係の改善に向けた話合い」と題する文書を発表した。そこでは、第1項目として、「双方は、日中間の4つの基本文書の諸原則と精神を遵守し、日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した」と書かれている。
ここでは「日中間の4つの基本文書」という言葉が用いられている。言うまでもなくそれは、1972年9月29日の「日中共同声明」、1978年8月12日の「日中平和友好条約」、1998年11月26日の「日中共同宣言」、そして2008年5月7日の「日中共同声明」である。これらが現在の日中関係の基礎となっていることは、困難や不透明性が続く中でも、いわば共通の認識になっているといえる。これらの文書の蓄積が、現在の日中関係の基礎となるものである。
ところが、冷戦後の30年間で、日本の対中政策は大きな振幅を見せ、長期的な政策の検討が困難となっていった。はたして日本はどのような日中関係を望ましいものと考えて、どのようなアプローチをしようとしているのか。日本は中国の経済成長を、はたしてどのように受け止めるべきか。そしてそのような日中関係は、日米同盟とどのような整合性を持つのであろうか。
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