ポストコロナ「日本特殊論」との決別が必要な訳

過去に倣いパンデミックは世界の秩序を変える

アジア・パシフィック・イニシアティブの船橋洋一理事長(右)と慶応義塾大学の細谷雄一教授(写真はいずれも本人提供)
新型コロナウイルスの猛威が、世界を震撼させ、人々は底なし沼に喘いでいます。いつ終息するのか、その見通しすら立たない現状の中、日本を含む世界の社会と経済はすでに大きな打撃を受け、ポスト・コロナでは国際政治や世界経済の構造や秩序が大きく変化してしまうことが予想されます。
ポスト・コロナの世界はどのように変容してしまうのか。コロナウイルスが私たちに突き付ける歴史的意味とは何か。ジャーナリストでシンクタンクのアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)を率いる船橋洋一氏と国際政治学者でAPI上席研究員でもある細谷雄一・慶応義塾大学教授の緊急対談を4回にわたりお届けします。(本対談はオンライン会議で行われました)

世界史を動かしたパンデミック

船橋 洋一(以下、船橋):新型コロナウイルスは全世界の社会を震撼させ、経済に打撃を与え、世界の秩序を変えつつあるように見えます。歴史、国際政治、日本の外交を研究されてきたお立場から、今回の危機をどのように位置づけておられますか。

細谷 雄一(以下、細谷):言うまでもありませんが、われわれは今、大変な世界の中にいるのだと思います。アメリカではこの1カ月で2000万人が職を失いました。過去10年間の失業者数の合計と同じ数です。中国の経済成長率が第1四半期でマイナス9%(前年同期比)という数字も出ています。かつて、20年ほど前のことですが、中国の専門家の中には「中国のGDPの成長率が7%を切ると、共産党の統治の正当性が失われて権力の維持が難しくなる」という見方をする研究者がいました。今年の成長率はほとんど0%に近い、前例のない数字になってしまうことが予想されます。

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つまり、アメリカの膨大な数の失業者や中国の経済成長の鈍化など、今、世界で起こっていることは、われわれが全く想定していなかった、想像もできなかった事態です。まず、私自身が、国際政治学者として感染症が世界に与える影響を過小評価し、そのインパクトの大きさを十分に理解できていなかった不徳を言わなければならないと思っています。

また、これを機会に改めて歴史を紐解いてみて、感染症が世界史を動かしてきたことに思い至り、これだけ重要な問題が、国際政治学という領域での私の視点から欠落していたことを、反省しています。

船橋:世界史を動かしたパンデミック(感染症の世界的大流行)というと、中世のペストがまず思い浮かびますが。

細谷:世界史を概観すると、人類はパンデミックによる世界史の激動を幾度か経験しています。ご指摘の中世の欧州で大流行したペストと、第1次世界大戦中のスペイン風邪がその典型です。

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