ポストコロナ「日本は必死で学ぶ必要がある」

「均衡」の概念に基づき文明観は問い直される

問い直される文明観と日本の課題を探ります(写真は5月14日、東京・新宿で撮影、ロイター/Issei Kato)
新型コロナウイルスの猛威によって、日本を含む世界の社会と経済が大きな打撃を受け、ポストコロナでは国際政治や世界経済の構造や秩序が大きく変化してしまうことが予想されます。
ジャーナリストでシンクタンクのアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)を率いる船橋洋一氏と国際政治学者でAPI上席研究員でもある細谷雄一・慶応義塾大学教授の緊急対談最終回をお届けします。(本対談はオンライン会議で行われました)
第1回:ポストコロナ「日本特殊論」との決別が必要な訳(2020年5月4日配信)
第2回:「ポストコロナ」米中いずれも勝者になれない訳(2020年5月11日配信)
第3回:ポストコロナ「世界経済は根本的に変質する」(2020年5月18日配信)

船橋 洋一(以下、船橋):戦後の国際社会ではGDPを指標とし、経済が成長している社会がいい社会であり、民主主義であるという価値観が支配していました。西側の資本主義社会だけでなく、東側の社会主義諸国を含めそのような体制でした。理想とされたのはより高い生活水準であり、完全雇用です。

この理念は、国連憲章にもOECD(経済協力開発機構)にも掲げられています。体制の違いにもかかわらず受け入れられたということは、これは文明的な概念であり、1つの進歩史観ということかもしれません。今回のコロナ危機により、こうした文明観や進歩史観は問い直されることになるのかどうか、そのあたりどのようにお考えですか。

均衡の概念――人類とウイルスの均衡

細谷 雄一(以下、細谷):歴史を見るときに、進歩主義的な歴史観と、保守主義的な歴史観の2つがあり、そのいずれも重要な意味があります。後者は、歴史や社会さらに人間の本質は変わらない、揺れ動きはあるように見えても同じところを循環している、というような認識に基づいた循環史観です。

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それを踏まえて申し上げると、今、私が非常に重要だと思うのは「均衡」という概念です。これほどまで国際社会において相互信頼や協調が後退してしまうと、「均衡」しか秩序を形成する方法はないと思われます。その中でも喫緊の課題は、米中間での新しい勢力均衡の確立です。

均衡は国際秩序だけの問題ではありません。前回、問題提起した国家権力と市民の権利の均衡は、民主主義のあり方に関する問題です。また、もっと大きな問題として、われわれは人類と自然の均衡という問題にも直面しています。

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