ロシア・ウクライナ戦争後、日本が果たすべき役割 政策を検証し代案を示すのがシンクタンクの使命

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左から細谷雄一・慶應義塾大学法学部教授、鈴木一人・東京大学公共政策大学院教授、神保謙・慶應義塾大学総合政策学部教授(写真:アジア・パシフィック・イニシアティブ)
API10周年記念鼎談「ロシア・ウクライナ戦争をめぐる地経学と国際秩序の変動」。「「世界秩序」ロシア・ウクライナ戦争で揺らぐ根幹」(6月27日配信)「ロシアを抑止できなかった根因と経済制裁の限界」(7月4日配信)に続く第3回は、戦争終結後の国際秩序の中での日本の果たすべき役割と進むべき方向について、さらにはシンクタンクの役割について、API研究主幹の細谷雄一・慶應義塾大学法学部教授、API・MSFエグゼクティブ・ディレクターの神保謙・慶應義塾大学総合政策学部教授、API上席研究員の鈴木一人・東京大学公共政策大学院教授の3氏が語り合う。

日本はかつて国際秩序を壊した

鈴木 一人(以下、鈴木):過去2回にわたり、ロシア・ウクライナ戦争の性質と国連の機能、戦争の抑止と経済制裁の効力について議論してきました。最終回の今回は、まず、戦争終結後の世界で予想される国際秩序の変動の中で、日本の果たすべき役割や進むべき方向について議論したいと思います。まずは歴史家である細谷さんに伺いたいと思います。

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細谷 雄一(以下、細谷):日本には1930年代に挑戦者・破壊者となって国際秩序を壊したという歴史があります。それにより、周辺諸国に大変な被害を与えてしまったのと同時に、自らも甚大な損失を被りました。その経験から、敗戦後の日本は、国際秩序を守る側、支える側として役割を果たしてきました。ですから、経験者として、国際秩序を破壊することは、非常にコストがかかるうえ、好ましくない結果をもたらすのだと、デメリットについてロシアの理解を促す。これをすることが日本の役割だと思います。

神保 謙(以下、神保):岸田首相は、「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」と述べ、ヨーロッパの危機の問題を自分ごととして捉えるべきだと発言しています。この指摘は重要だと思います。つまり、アジアの厳しい戦略環境の中にあって、ロシア・ウクライナ戦争を教訓として、抑止力を強化し、安定的な秩序形成のために力を注ぐということに尽きます。

今回、ロシアの経済制裁に加わったのは40数カ国に過ぎません。従って、その他の多くの国々との今後の関わりも重要な課題です。いまだ終結には至っていませんが、ロシア・ウクライナ戦争を教訓として、制裁に参加しなかった国々も加えた地域の秩序やグローバルな秩序を築いていくうえで、日本が新たなガバナンスのあり方を主導するイニシアティブを発揮できればよいと思っています。

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