ロシア・ウクライナ戦争後、日本が果たすべき役割 政策を検証し代案を示すのがシンクタンクの使命

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人々がより良い世界や、より良い日本に向けた構想力が必要だと考え、たくさんの政策の選択肢があって、それを国民が選ぶことができるような状況があれば、官僚組織以外の民間のアイディアの形成、つまりシンクタンクの役割は緊張感とリアリティを持つようになると思います。政権交代のたびに官僚の大半が入れ替わるアメリカのリボルビング・ドアのシステムのように、日本でも政権交代が起こり、健全なリボルビング・ドアを作り出すということの中で、シンクタンクが位置づけられるのが最も望ましい姿だと思います。

耳は痛いが聞きたい

細谷:シンクタンクの役割はいろいろありますが、1つは、政府にとって耳は痛いけれど聞きたくなるような政策や検証を提示することが重要と考えています。われわれ教員も、学生から褒められてばかりだと疑念を感じてしまいますし、批判されてばかりだと心が折れます。つまり、大切なのは愛のある批判です。

そのためには、日本に政策レビュー(検証)の文化を育てることが必要だと思います。政府や政策決定の中枢にいる人たちが、耳には痛いがより良い政策を作るためにはぜひ聞きたいと思うような質の高いレビューをする。無条件の賞賛でも、ためにする批判でもなく、良い政策は評価し、問題がある場合は厳しく批判し代案を示す。そのような質の高いレビューを提示することが、シンクタンクには求められると自覚しています。

鈴木:巨大な官僚組織である霞が関が最大のシンクタンクと言われている状況の中で、民間のシンクタンクの提言や主張に対しては、「絵空事」とか「現実を捉えていない」という批判を受けることもしばしばありましたが、そうではないと思います。細谷さん流に言うと「愛のある批判」、私流に言うと「建設的な意見」ということになりますが、政府の政策に対し、オルタナティヴを提示し続けることが我々の役割だと思います。

ところで、APIは7月1日に六本木にある国際文化会館と合併しました。新しい組織への期待や、APIはどのように変わっていくのかについて、お話しください。

建物が醸成するシンクタンク文化

神保:合併の話を聞いたときには大変驚きました。同時に、世界のシンクタンクの歴史に想いを巡らせるきっかけとなりました。イギリスには王立国際問題研究所「チャタムハウス」というシンクタンクがあります。その設立は第1次世界大戦後のパリ講和会議の後でした。イギリスの対外政策を世界的な規模で考えていく、という志が背景にありました。

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