「世界秩序」ロシア・ウクライナ戦争で揺らぐ根幹 機能不全の国連はどんな役割を担っていくのか

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先行きが見通せない状況で、戦争終結後の国際秩序の変動を考える(写真:Eric Lee/Bloomberg)
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)は2月28日で創立10周年を迎えた。節目にあたり、今回から3回にわたり、API研究主幹の細谷雄一・慶應義塾大学法学部教授、API・MSFエグゼクティブ・ディレクターの神保謙・慶應義塾大学総合政策学部教授、API上席研究員の鈴木一人・東京大学公共政策大学院教授の3氏が「ロシア・ウクライナ戦争をめぐる地経学と国際秩序の変動」について3週連続で語り合う。
細谷氏は外交史を専門とするとともに、政府の安全保障と防衛に関する懇談会などの委員を歴任。神保氏の専門は外交政策で、防衛省参与、国家安全保障局顧問などを歴任。鈴木氏は国際政治の専門家で2013~2015年に国連のイラン制裁専門家パネル委員を務めるなどした。

鈴木 一人(以下、鈴木):API10周年を記念しての鼎談ですので、まずはAPIの10年を少しだけ振り返っておきたいと思います。APIはどのようなシンクタンクで、何を成し遂げ、社会にどのような変化をもたらしてきたとお考えですか。

インディペンデントと検証

細谷 雄一(以下、細谷):APIには2つの特長があると思います。1つはインディペンデントであることです。日本では防衛研究所、日本国際問題研究所、経済産業研究所のような官庁系のシンクタンクが主流ですが、APIは一貫して政府から助成金を得ずに独自の見解を発信し続けて来ました。もう1つは、福島原発事故やコロナ対策などの政府の政策を検証してきたことです。船橋洋一・理事長の強い方針もあってのことでしたが、社会から信頼される検証報告ができたのは、インディペンデントであったからだと思います。

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神保 謙(以下、神保):発足当初の日本再建イニシアティブ(RJIF)、そしてAPIに引き継がれた10年間で、私自身は2つの領域で5つのプロジェクトに関わりました。1つ目の領域は、日本のグランド・ストラテジーです。2013年に日本の国家安全保障戦略を考えるプロジェクトを立ち上げ、「静かな抑止力」と題する政策提言を発表しました。ここから派生して形成された「現代日本の地政学」のグループでは、研究会を組織して、その成果として『現代日本の地政学 - 13のリスクと地経学の時代』(中公新書)を出版しました。

もう1つの領域は政策の検証です。政策当事者にインタビューを重ねて重要政策の成果や失敗を検証するメソッドこそ、APIが確立した独自の手法だと思います。私は、民主党政権の3年3カ月を扱った『民主党政権 失敗の検証』(中公新書)と、第2次安倍政権の7年8カ月を扱った『検証 安倍政権 保守とリアリズムの政治』(文春新書)の双方に関わりましたが、かけがえのない経験でした。民主党政権の際には政府関係者27名、安倍政権の際には54名のヒアリングを実施しました。これらのプロジェクトを支えたのは船橋理事長の強いリーダーシップですが、船橋さんが関係者に電話してアポを取る際の迫力には圧倒されました。またAPIのリサーチアシスタント、インターンの資料収集や準備などが、プロジェクトの質を支えました。まさに総合力としての成果でした。

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