「世界秩序」ロシア・ウクライナ戦争で揺らぐ根幹 機能不全の国連はどんな役割を担っていくのか

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鈴木:アメリカファースト主義のトランプ政権の登場以降、アフガニスタンからの撤退など、アメリカが国際社会の問題に積極的に関与しない姿勢を明確にしたことで、それまで、ロシアの軍事的行動のブレーキになっていた戦略的曖昧さが緩んでしまい、結果的にロシアの行動の自由を広げてしまったということができると思います。また、ロシアが勝利してしまえば、これまでの国際秩序の基盤であった法の支配や国際法は、あってなきものになってしまいますし、この世界は力でしか解決できない無法地帯と化す危険性をはらんでいると思います。

機能しないことを前提につくられた組織――国連

では、今後の世界秩序を考えるうえで、国際法や国際機関、特に国連はどのように変化していくべきなのでしょうか。国際連合はロシアの暴走を止められなかったことで「機能不全」と言われています。しかし、安保理の常任理事国に拒否権がある限り、国連は動かないような「機能」が内包されています。国連がつくられたときは、ともに第2次世界大戦を戦った連合国である常任理事国同士が戦うということはないことを前提としていました。

今後、新しい世界秩序をつくっていくうえで、国連の改革や新しい国際機関を創設するということも含めて、国連はどのような法の支配をつくっていく役割を担っていくのでしょうか。国連創設の起源を研究されている細谷さんから伺いたいと思います。

細谷:やや誤解を招きやすい言い方かもしれませんが、国連はそもそもの最初から機能しないことを前提につくられた組織でした。国連創設時に事務総長代行を務めたグラッドウィン・ジェブや、外務事務次官だったアレクサンダー ・カドガンといったイギリスの外交官は当初からソ連との協力。なので、国連安保理で大国間の協調が機能しないときに備えて、国連憲章51条や52条に見られるように、集団的自衛権という形で同盟を残したり、地域条項をつくったりして補完しようと設計していたのです。

つまり、ある程度機能するけど、大国間の利害が衝突して機能しないことも想定してつくられたのが国連でした。冷戦後に、国連にやや過剰な期待が集まった時期はありましたが、今は本来のあまり機能しないロープロファイルの国連に戻りつつあります。

しかし、1930年代の国際連盟のように、それが完全に破綻する事態は避けなければいけません。例えば、かつて日本が国際連盟を脱退したように、中国やロシアが国連から脱退するということになれば、国連は破綻に向かってしまいます。ですから、ロープロファイルではあっても破綻はしないレベルで国連を活用しなければなりません。

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