初期のチャタムハウス躍進のきっかけは、ある慈善家によるセント・ジェイムズ・スクエアにある建物の寄贈でした。その建物の中で知的交流が活発になり、後に、今日の知的交流の基盤とも言われる「チャタムハウス・ルール」ができました。会員の発言はどこで紹介してもいいけれど、発言者名は伏せておくというルールです。このルールを確認し合うことで、活発な政策議論が生まれる文化が醸成されました。
その文化の醸成に建物が果たした役割は大きかったと思います。イギリスだけでなく、オランダなど欧米の各地に、そうした立派な土地と建物を所有するシンクタンクはたくさんあります。国際文化会館の歴史を支えてきたのも、落ち着いた佇まいの建物と優美な日本庭園です。今回の合併は、チャタムハウスのように、建物が醸成した新しいシンクタンクの文化を日本からも生み出す最大の契機となると考えています。
細谷:仕事柄、さまざまな国際会議に出席しますが、記憶には建物のイメージが強く残っています。つまり、何かを思い出すときには、建物がその何かを象徴するということがあります。その意味で、APIが国際文化会館という建物と一体となった団体と一緒になることには、象徴的な意味があると思います。
これを機に、私はコモンルームの文化を作りたいと思っています。コモンルームとは共有スペースのことですが、そこに多くの人が集まって、お茶を飲みながら自由闊達に議論する。その前提はメンバーシップです。さまざまな分野の専門家がメンバーとなって自由に意見交換する中で、相乗効果により高いレベルで議論を深めていく。そういう文化を作りたいと思うのです。そういった空間として、国際文化会館が活用されることを期待しています。
対外発信するシンクタンク
鈴木:私は、国際文化会館の発信力にも期待しています。お二人がお話しされたシンクタンクの文化は、どちらかというとイギリスやヨーロッパのイメージだと思いますが、私はアメリカのシンクタンクのイメージにも学びたいと思います。オープンで対外発信を重視する文化です。国際交流団体として70年の歴史を持つ国際文化会館は対外発信のプラットフォームとして申し分ありません。メンバーシップのコモンルームで議論を深めることは非常に大切ですが、議論するだけではもったいないので、どんどん発信していきたいと思います。その意味で、発信力のある国際文化会館との合併には大いに期待していました。
APIは合併後も、さまざまな分野の専門家と議論を交わし、政府や人々にオルタナティヴな政策や提言を提示し、それを活発に発信していきます。是非、ご期待し、見守ってください。
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