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ようやく訪れた通信業界の「値上げ局面」・・・慎重なソフトバンクと楽天モバイルの先行き占う懐事情 濃淡わかれたキャリア4社の価格戦略

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現状、値上げの方針を打ち出していないソフトバンクと楽天モバイル。従来の料金体系のまま戦い抜けるのか(左写真:尾形文繁撮影、右写真:梅谷秀司撮影)
2021年に菅義偉政権下で政府主導の値下げが進み、低水準で推移してきた携帯電話料金。あらゆるモノの値段が上昇するインフレ局面に日本が突入してもなお、通信業界では世の時流から取り残される形でキャリア各社の均衡状態が長く維持されてきた。
しかしここにきて、NTTドコモとKDDIが立て続けに値上げへと踏み切った(詳細はこちら)。物価高の定着で消費者の価格転嫁に対する抵抗感は薄れており、かつてキャリアににらみを利かせた菅氏の「政治的存在感も低下している」(総務省幹部)。今後、業界では値上げ基調が続くのか。後編に当たる本記事では、まだ値上げに踏み切っていないソフトバンクと楽天モバイルの動向、そして今後の業界の競争軸を検証する。

限界近いが「競争にも負けたくない」

エンタメや通信品質という「付加価値」を武器に値上げに踏み切ったドコモとKDDIに対し、今後の動向が注目されているのが、ソフトバンクと楽天モバイルだ。

ソフトバンクはKDDIと同様、かねて物価高に伴う価格転嫁の重要性を指摘し、「中長期的には、物価上昇に応じた値上げが当たり前のようにできる市場になるとありがたい」(宮川潤一社長)という立場だった。

5月8日の決算会見で、宮川社長は2社の動きを「値下げが続いたデフレ業界の構造を何とか乗り越えようとコスト削減を続けてきたが、そろそろ限界に達しつつある。われわれもそろそろ同じような方向でいきたいと思っている」と歓迎した。ただ、自社の具体的な値上げについては「獲得競争にも負けたくない。どのタイミングがベストなのかは事業上の戦略として計算してみたい」と述べるにとどめた。

さらにその翌週の5月15日、三井住友カードとの包括業務提携に関する会見の場で宮川社長は「順調に入っていたお客様が値上げで入らなくなるのでは、との懸念も社内で考えている。携帯電話のインフレ対応という意味で、他の収益がついてきて値上げしなくて済むなら、本当は値上げしたくない」と、ややトーンダウンした様子も見せた。

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