米不足のフィリピンで選挙を前に備蓄米を放出して半値に、それでも負けたフィリピンの政権与党のケースは自民党の反面教師となるか

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フィリピンの市場で販売されているコメ。安くても1キログラム40ペソ以上する。日本産と称するコメは100ペソで売られていた(写真・2023年12月、マニラ首都圏ケソン市内で柴田直治)

主食の米が高騰し、国政選挙で与党の得票に影響しそうだ。あわてて備蓄米を取り崩して米の価格を半分にしようと試みたが……。日本ではない。フィリピンの話だ。それでもマルコス政権は2025年5月の選挙で負けた。日本の政治に教訓はあるか。

2025年5月15日、マニラ首都圏と近郊にある32の政府公認店で、1キログラム20ペソ(52円)の米が売り出された。ボンボン・マルコス大統領は「私の任期が終わるまでこの価格で販売を続けたい」と意気込みを語った。

米なしでは生きていけない人々

フィリピン農業省の価格監視調査によると、4月21〜24日のマニラ首都圏の市場における標準米の価格は、1キログラム39.99ペソから58.17ペソだった。つまり政府公認店の販売価格は市場の半値から3分の1ということになる。

1キログラム20ペソだから5キログラムで100ペソ≒260円。日本で放出される備蓄米5キログラム約2000円の約8分の1だから随分安いと感じるかもしれないが、1人当たりの名目GDPは日本が3万3960ドルに対して4350ドル(2025年、IMF推計)。こちらも約8分の1なので負担感は似たようなものだろう。

一方、フィリピン人の米の年間消費量は1人当たり約150キログラムと日本人の約3倍だ。ごはんのお代わりし放題の店が人気を集め、ハンバーガ―店やピザ店でもご飯との組み合わせが定番である。まさしく主食であり、米なしでは暮らせない人々なのだ。

令和の米騒動以来、日本でも米への関心が急激に高まっているものの、フィリピン人の米に対する切実な思い入れは、はるかに上を行く。

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