
地方銀行の2025年3月期決算は、8割以上の地銀が増益となる好決算だった。全地銀97行の純利益は合算で約1.27兆円となり、2017年3月期以来となる1兆円を突破。金利上昇による貸出金利回りの拡大や、日本銀行の当座預金(超過準備)から得られる利息収入といった資金利益が地銀の業績を大きく押し上げた。
ところが、好決算の陰で「不都合な事実」も存在する。有価証券運用で抱える評価損だ。
国内金利が上昇したことで、低金利時代に購入していた低利回りの債券価格が下落。2024年3月期に約▲1.17兆円だった地銀合算の債券評価損益は、2025年3月期に約▲2.69兆円にまで拡大した。東京スター銀行と北九州銀行以外のすべての地銀が、債券運用で評価損状態に陥った。
これにより有価証券運用全体(満期保有除く)で評価損となった地銀も、2024年3月期の31行から56行に増えている。
低金利時代の運用戦略で明暗
地銀で評価損が膨らんでいるのには、マイナス金利時代の運用戦略も関係している。膨れ上がる預金の運用先に悩む中、多くの地銀が債券投資のデュレーション(平均回収期間)をのばすことで期間収益を確保してきた。
日銀の「金融システムレポート」(2024年4月号)によると、地銀全体の債券残高に占める「10年超」の割合は、前回の利上げ局面(2006年度)がわずか1%程度だったのに対し、今回の利上げ局面(2023年度)では2割以上に拡大。「金利ある世界」の到来によって、こうした長期の債券が多額の評価損に陥ってしまっている。
一方、デュレーションを短期化させてきた地銀は、ポートフォリオの入れ替えを行いやすいため、足元の高金利債券への投資で資金利益を拡大させている。まさにマイナス金利時代の運用戦略が、金利ある世界における地銀の明暗を分けているといえる。