10年以上にわたった金融緩和政策が、終わりを迎えつつある。日本銀行は3月にマイナス金利を解除。年内にもさらなる利上げに踏み切る公算が大きく、「金利のある世界」が近づいている。
金利上昇は銀行経営に追い風だと言われる。貸出金利や債券の利回りが上昇し、運用する収益が拡大するためだ。だが、メガバンクに比べて規模や経営体力に乏しい地方銀行は、利上げ局面でも予断を許さない。すでに保有している債券に含み損が発生しているほか、貸出先の中小企業が利上げに耐えられず経営が行き詰まれば貸し倒れにつながる。
肝心の貸出金利も、現時点では利上げの恩恵を満足に享受できていない。ある小規模地銀の幹部は「貸出金利の引き上げが、預金金利の上昇に追いつかない」と話す。日銀のマイナス金利解除を受けて、4月には全国の銀行が預金金利を一斉に引き上げた。一方、地銀の貸出金利は据え置かれているケースが多い。固定金利型や、横ばいを保つ短期プライムレート(短プラ)連動型が多いからだ。貸出金利の引き上げに手間取れば、利ザヤは潰れる一方だ。
金利上昇で広がる収益格差
では、金利のある世界を謳歌できる地銀と、そうでない地銀はどこか。東洋経済は全国の地銀99行の最新決算を集計。個別行ごとに経営体力の衰退度を分析し、ランキングを作成した。
ランキングの作成方法は下記の通りだ。収益力、健全性、有価証券の運用力に関するデータを抽出し、点数化。総合得点の低い順に並べている。
ワースト1位は長野銀行。県内トップの八十二銀行との経営統合を控える中、保有する有価証券の含み損の大規模ロスカットに踏み切ったほか、八十二銀行と査定基準を統一した結果、多額の与信費用を計上したことで、財務体質が急速に悪化した。
2位のきらやか銀行は、大口取引先の倒産で多額の与信費用を計上。不良債権比率が上昇し、自己資本が棄損した。同行が抱える200億円の公的資金は返済のメドが立たず、国に返済延期を求めている。国が保有する優先株への配当がなされなければ、実質的な国有化状態となる。
一方、体力のある地銀にとって、金利上昇は収益を伸ばす絶好の機会だ。銀行間の格差が広がれば、さらなる再編の引き金となる可能性がある。