日本の銀行が持つべき自己資本比率は、国内基準行で4%、海外に支店を構える国際基準行で8%以上とされている。かつては景気変動に耐えられるよう資本を蓄積することが重視されていたが、今は資本を溜め込んで成長投資や株主還元がおろそかになることも問題視されている。
では、地方銀行の中で、資本が不足している銀行と、持ちすぎている銀行はどこか。東洋経済は地銀99行の2024年3月期決算を集計。国内基準行は総自己資本比率、国際基準行は普通株式等Tier1比率を参照し、3月末時点の自己資本比率をランキングした。
ワースト1位は福井県の福邦銀行。3月末時点の自己資本比率は5.8%と、昨年に続いて地銀の中で最も低かった。同行は2026年5月に福井銀行と合併する予定だが、その福井銀行の自己資本比率もワースト6位の7.43%にとどまる。統合による相乗効果の創出で利益を積み上げることや、経費削減が急がれる。
ワースト9位のきらやか銀行は、3月末の自己資本比率を見ると7.7%だが、公的資金200億円の返済期限が9月に迫っている。200億円を返済すると自己資本比率は4%台にまで低下する見通しだ。実態は数字以上に厳しく、同行は返済期限の延長を金融庁に求めている。
資本蓄積だけの時代は終焉
資本が薄すぎれば、健全性に支障を来す一方、持ちすぎれば資本効率が低下する。過剰な資本だと映れば、余剰資本の還元を求める「アクティビスト(モノ言う株主)」の標的になりかねない。
自己資本比率のトップは、長野県の八十二銀行で21%だった。だが、同行は6月の株主総会において、香港のファンドから政策保有株式の売却や国内基準行への転換などを求める株主提案を受けている。後者の要求は、資本規制が相対的に緩い国内基準に移行すれば余剰資本が生まれる、という主張だ。
最終ページでは、上場地銀グループのPBR(株価純資産倍率)やROE(自己資本利益率)、配当性向の一覧も掲載した。資本の蓄積だけを求められた時代は終焉し、今は適正な資本水準の見極めと、資本配賦の道筋を株主に示すことが求められている。