
「銀行ビジネスは預金が増えることを前提としてきたが、預金が自然に増える時代がついに終わった」
こう話すのは地方銀行の役員。この地銀では2025年3月期の預金残高が前期比で増えているが、大きな環境変化に危機感を募らせる。同行が地盤とする県全体の「個人預金」が減少に転じたからだ。
「金利ある世界」が到来し、金利収益の原資となる預金の重要性が増している。中でも各行がより重視しているのが個人預金だ。給与振り込みなどを通じて口座に滞留する個人預金は一般に粘着性が高く、銀行にとって安定的な資金源とみなされているからだ。
ところが、金利の復活によって銀行間の預金獲得競争が勃発。個人がより高い金利を求めて預金を移し替える動きが活発になり、預金減少に転じた地方銀行が増えている(詳細はこちら)。
地銀は、ただでさえ相続に伴って、子どもが住む都市部に個人預金が流出しやすい環境。一部主要行やネット銀行の預金の金利妙味が増したことで、相続預金の流出にも拍車がかかっているとみられる。
高知県は2年連続で流出超過
日本銀行の統計を基に、東洋経済が各都道府県の「個人預金残高(国内銀行勘定)」を調べたところ、2025年3月末は前年同月と比べて15県で個人預金が減少(流出超過)していることがわかった。
全国合計の増減率は1.35%増となっており、全体で見ると今も個人預金は増えている。増加率が全国トップ(流出ランキングで最下位)だったのは、やはり東京都。前年同月比3.9%増だった。
一方、2024年3月末に前年同月比で個人預金が減少していたのは高知県だけだったので、金利復活後に猛烈な勢いで地方から都市部に個人預金が流出していることがわかる。
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