進次郎効果で追い風が吹く石破政権。対米関税交渉も続くが、日本の国力復活に向けた自覚があるか。

『吉川幸次郎全集 第5巻』(筑摩書房)の「中国の知恵──孔子について」。中国文学の最高権威、吉川幸次郎は、孔子における政治の重視を「論語」の以下の条によって説明する。
《(弟子の)子路が自己の道徳的完成だけでいいのですか、と君子の資格について問う。対して孔子は「己れを修めて以って敬め」と答えている。だが、子路はそれだけでいいのですかと無遠慮に反論する。
──己れを修めて以くて人を安めよ。
「人」とは自己に近い範囲の人間。子路は満足せず、詰問風の質問を繰り返す。だが、孔子の答えは強烈である。
──己れを修めて百姓を安めよ。堯舜すらなおこれに病みしものを。
「百姓」とは農民の意ではなく、すべての人民という意である。すなわち、為政者はすべての人民を安定させよ。それが君子の、つまり優れた人間の、究極の任務であるとするのである。それは堯舜(中国古代の賢明なる天子の意)のような優れた為政者にも困難であった。そして人間の任務が政治にあることを主張するもの──》。
昨年の初夏、岸田文雄前首相は「岸田包囲網」が敷かれつつありながら、「私自身は四面楚歌であるとは感じていない」と強弁したことがあった。
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