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沖縄で続く米軍による環境汚染、アメリカ国内やドイツでは対応が進むのに、日本で進まないのはなぜか。垣間見える日本政府のずるさ

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嘉手納基地での泡消火剤漏洩事故
2013年12月4日沖縄の嘉手納基地で起きた泡消火剤漏出事故(写真:ジョン・ミッチェル提供)

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「市場規模は約200億円から1000億円」

ある企業が試算した米軍基地返還に伴う原状回復費用である。9年前の2016年に那覇市で開催されたセミナーで、土壌改善や産業廃棄物処理を手がける日本本土企業が沖縄の土木建築業者に対し、次のように声をかけた。「米軍基地の大規模返還の際に生じる有害物質や廃棄物の処理はビジネスチャンスだ」「沖縄で土壌改善の技術を習得し、世界中で実践しよう」

その3年前の2013年、日米両政府は沖縄本島の人口密集地にある米軍施設・区域のうち、約1000ヘクタール(東京ドーム約220個分)を超える土地の返還計画を明らかにしていた。計画には名護市辺野古への移設を条件とする宜野湾市の普天間基地をはじめ、都市部にある那覇港湾施設や牧港補給地区も含まれていた。

基地が返還されても跡地利用は容易じゃない

沖縄戦後、米軍によって「銃剣とブルドーザー」で接収された土地が返還されることは、沖縄県民の悲願である。

しかし、返還軍用地が跡地利用までこぎつけるのは容易ではない。長く軍隊に使われた土地には予測困難な汚染が隠れている可能性があるからだ。

国内で水俣病をはじめとする4大公害病が発覚し、環境汚染への意識が高まったのは1950年代から1970年代初めにかけて。沖縄はまだアメリカの統治下に置かれ、国内の環境政策の射程に入っていなかった。

米軍由来の環境汚染については、国内の法制度が適用されない。また、アメリカ国外にある基地で汚染が発覚した際に、浄化作業を行うかどうかは米軍が個別に判断しており、公害対策の基本である「汚染者負担の原則」が貫かれない仕組みになっている。

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