今年の後半にかけて、春闘の結果を受けた名目賃金の上昇やインフレの鈍化に伴って実質賃金が改善し、それによって個人消費が回復すると期待されている。
植田和男日銀総裁も、4月の産経新聞のインタビューで「コストプッシュによる高いインフレが落ち着いてくれば、今は2%を大きく超えている消費者物価指数(総合)が2%に近づくだろう。一方で、賃上げは基本給で3%前後、春闘ではもう少し強い動きになっているので、実質賃金のプラスが定着するのはいつからというのは申し上げにくいが、今年の半ばから後半にかけてというイメージだ」と述べた。
6月3日の内外情勢調査会における講演でも「わが国経済は関税政策による下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムも途切れることはないと考えています」(日銀講演録)と述べ、年後半にかけての実質賃金の回復による消費の回復に期待を示している。
逆に言えば、内外経済の状況に鑑みると、利上げの機運が高まるパスは実質賃金の回復と消費増くらいにしか期待できない、という側面もありそうである。
頼みの綱の「実質賃金回復」が危うい
足元までの賃金の動きを見ると、2024年半ば以降、名目賃金はおおむね前年同月比でプラス2%を上回る推移が続いてきた。一方、インフレの高止まりを受け、実質賃金はならしてみると前年同月比マイナス圏で推移している。
2025年の春闘について、連合による第6回回答集計は5.26%となり、2024年の5.10%を小幅に上回っている。「インフレ圧力さえ弱くなれば、実質賃金はいずれ回復するだろう」という見方が多い。
しかし、2025年に入ってから賃金のベースである「所定内給与」の前年比が伸び悩んでしまった。

2月分と3月分については、うるう年要因で一時的に弱くなっていたという見方が有力だが、うるう年要因が剥落した4月分も前年同月比2.2%と、物足りない結果である。実質賃金の見通しも下振れリスクが高まっている。
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