日本と中国の不安定な関係を招いている根本構造 経済的相互依存の深化が軍事的緊張の増大に

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日中関係に影を落とす軍事的緊張の発生源をたどり、今を読み解く(写真:ちょび/PIXTA)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

高まる日中間の軍事的緊張

今年で国交正常化50周年を迎える日本と中国の間では、経済的相互依存が形成されている一方で、軍事的緊張が高まっている。かかる現状は、日中関係の包括的マネジメントを難しくしており、今後の先行きを不透明なものにしている。

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日中間の軍事的緊張を醸成させている主たる原因は、中国において過去30年以上にわたって展開されてきた軍拡である。中国の主権を70年以上にわたって独占してきた中国共産党は、1990年代以降、莫大な資金を投入して中国人民解放軍(以下、解放軍)の全面的刷新に取り組んできた。それに伴い、解放軍の活動範囲は、東シナ海、南シナ海、西太平洋、インド洋にまで拡大しつつある。

東シナ海では、解放軍の軍艦や軍用機が日本近海にまで活動範囲をひろげ、解放軍と同じく中国共産党中央軍事委員会の隷下にある「中国海警」(中国人民武装警察の一部局)の艦船が尖閣諸島周辺の日本領海への侵入を繰り返している。南シナ海では、解放軍がスプラトリー諸島に点在する複数の岩礁の埋め立てをおこない、そこに軍事拠点を構築したことによってベトナムやフィリピンをはじめとする周辺諸国との軍事的緊張が高まっている。

こうした事態に直面した日本は、「自由で開かれたインド太平洋」構想を掲げ、そのなかで法の支配に基づく海洋秩序の重要性を強調しつつ、中国を念頭に置いた「島嶼防衛」の強化を進めてきた。

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