そもそも日米欧は、「経済的相互依存は中国との緊張緩和や中国の体制転換につながるはずだ」という希望的観測に基づいてグローバル経済に中国を組み込んだのだが、実際には真逆の展開となっている。そして、その展開を説明するうえで、「未完の中国内戦」を外すことはできない。
日米は、これまで中国とのビジネスを維持しつつ、中国の軍拡に対して軍事的方策で対抗するという対症療法を続けてきた。しかし、日米欧の経済界が中国経済に栄養分を注入し続けるかぎり、解放軍は成長を続けるため、対症療法のコストがかさむ一方で緊張の病根そのものはいつまでたっても治癒されないことになる。
経済的相互依存を逆手にとった経済制裁を多用
「政経不可分」「軍民融合」を掲げる中国政府が近年、外交・安保問題をめぐって対峙する相手国に経済的相互依存を逆手にとった経済制裁を多用するようになったことも看過できない問題だ。2010年の尖閣沖漁船衝突事件に際して中国側が日本へのレア・アースの供給を止めたことは、その象徴的な事例といえよう。
要するに、日本の対中ビジネスは、中国における軍拡の資金源になっているという意味でも、対中外交のアキレス腱と化しているという意味でも、日本の安保にとってのリスク要因という性格を強めているのだ。
目下、日本では2013年以来となる国家安全保障戦略の見直し作業が進められているが、当面続くと想定される中国の軍拡がもたらすリスクを十二分に考慮した包括的対抗策の立案は、避けて通れない課題だ。その重要課題に取り組む際に、「未完の中国内戦」および日中関係にみられる経済と安保の構造的矛盾がどの程度吟味されるかが注目される。
(阿南友亮/東北大学大学院法学研究科教授)
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