日本企業が外国人を幹部候補生として採用し始めたことを前回述べた。これまでも日本企業は外国人を採用していたが、その多くは現地工場の単純労働者や現地での補助的な事務員、営業担当者などであり、本社の戦略的意思決定に関与する幹部候補生ではなかった。だから、幹部候補生としての採用は、方針が大転換したことを示している。2012年春採用では、こうした動きは、さらに明確な形で進むだろう。
これは、日本企業と日本人(特にこれから就職しようとする大学生)にとって、極めて大きな意味を持つ変化だ。それは、「地殻変動」というしかない変化である。
まず日本人大学生の就職戦線に大きな影響が及ぶ。すでに大学生の内定率は過去最悪の水準になっているが、その背景には、日本企業が日本人学生よりはアジア(特に中国)の優秀な学生に目を転じ始めたことがある。また、社員が日本人であることを前提としていたこれまでの人事管理・職務管理体制に、本質的な影響を与えるだろう。文化的背景や考え方が異なる人材と協働することは、決して容易な課題ではあるまい。
しかし、外国人の活用がうまい形で進めば、日本を活性化する最後の切り札になるかもしれない。その意味では大変重要なことである。そして、この問題は、日本企業のビジネスモデルや新興国との付き合い方に関しての基本的な方向づけとも、密接にかかわっている。
市場の成長と収益の確保とは別物
日本企業が外国人採用を増加させている直接的な理由は、アジア新興国における事業を拡大したいというものだ。主力マーケットを、国内と先進国から新興国へと転換しようとしているのだ。