大学生の就職内定率が2010年12月時点で、過去最悪の水準に落ち込んだ。直接的な原因は、経済の先行きが不透明で、企業が採用増に踏み切れないことだ。ただし、それだけではなく、日本企業の採用方針が大きく変化した影響も見逃せない。その証拠に、日本人学生の就職は厳しいが、日本への留学生の就職状況は良好だ(ウォールストリートジャーナル、10年12月2日)。これまで述べてきたように、日本企業は新規採用を日本人学生から外国人(特に中国人)にシフトし始めたのである。ソニーも新規採用の3割を外国人にする方針を決めた(日本経済新聞、11年1月19日)。
こうした状況が日本人にとって大変な事態であることは言うまでもない。日本企業の雇用が中国人学生に奪われることになるからだ。しかし、自国企業の雇用を自国人で独占できないのはグローバル化した経済では当然のことである。そして外国人を適切に活用することができれば、それを日本経済再生のキーとなしうる。その意味で大変重要な変化だ。
この問題は、「日本が中国との間でいかなる分業関係を確立するか」という観点から考える必要がある。
これまでの日本と中国との関係は、「中国で生産された消費財を日本が輸入し、中国に対しては中間財を輸出する」というものであった。ここでの中国の役割は、単純労働力の供給である。
経済危機後、日本が中国を見る目に変化が生じている。国内需要や先進国需要が停滞する半面で、中国の最終消費市場が急拡大しているため「これからの市場は中国」と方向転換する企業が急増している。ここでは、中国は巨大な消費主体と見なされている。