(第60回)「就職協定」と「倫理憲章」、そして「卒業後3年以内既卒者の新卒扱い」に関する人事の声

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●経団連の倫理憲章の実効性を否定するアンケート結果

 経団連の倫理憲章は、「正常な学校教育と学習環境の確保」「選考活動早期開始の自粛」「公平・公正な採用の徹底」「情報の公開」「広報活動であることの明示」「採用内定日の遵守(10月1日以降)」を定めている。 それぞれの項目に書かれているのはもっともなことだが、問題は経団連の賛同企業927社が順守しているかどうかだ。守られない倫理憲章に価値はないからだ。

 「主要企業が多く参加しているので意味がある」と価値を認める人事は9.4%ととても少ない。
 認める理由は「限界はあるが、日本をリードする企業組織集団がそのようにアピールするのは、効果の前に責任としてなすべきこと」。ただし、賛同企業が倫理憲章を順守していると考えている人事は皆無に近く、「経団連の倫理憲章は経団連加盟企業の共通認識・行動ガイドラインの1つに過ぎず、それが縛りになると考えるのは無理筋ではないかと思う」と実効性は否定されている。

●6割近い人事が「意味がない」と考えている

図表1:日本経団連の「倫理憲章」は共同宣言する一部企業だけに適用されるものですが、これについてどう思われますか。

 57.9%の人事は「罰則がない自主的なルールなので意味がない(守らない企業が多い)」と考えており、「何らかのルールは必要だが今の倫理憲章では限界がある」という意見に56.3%が賛同している。「意味がない」「限界がある」と大多数の人事が倫理憲章を否定している。

・決めごとを作る大企業が、裏側で自らそれを破っている。
・大企業が倫理憲章に外れる早期の選考試験を行っているという情報を学生からよく聞く。必然的に、中小企業も黙ってみているわけにはいかない。
・魅力ある学生が欲しいというのは全企業の一致したところなので、罰則がない限りは守られることのない憲章ではないか。

 罰則規定のない紳士協定では守られないのは当たり前という意見が多いが、1996年に廃止された就職協定も紳士協定にとどまっていた。

 そこで「その他の一般企業に守らせる統一ルールが必要」という意見も出てくる。
26.8%の人事が統一ルール(何らかの縛りや罰則を設ける)の必要性を認めている。

・強制力がない限り、意味がない。
・強制的に統一すれば良いだけであり、倫理憲章が賛同ベースになっているのが中途半端。
・ペナルティを設けてでも、すべての企業がそれに倣うようにしないと意味がない。

 統一ルールを支持する意見もあるが、逆に「強制的に行うルールは好ましくなく、自由競争でやるべき」という人事も11%存在する。
 「新卒採用時期(試験)等を自主規制したいという動きは、文部科学省はじめ役所の考え。企業にしてみると、大小を問わず不利益(機会損失)になることを産業界代表が提議するのは、不審に思う」は、傾聴に値する意見だ。

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