HRプロ株式会社
前回から新卒の「選考時期」についての人事アンケート(HRプロが10月初めに実施)を採り上げている。今回は「就職協定」と「倫理憲章」、そして「3年以内の既卒者の新卒扱い採用」について、人事の意識を調べてみたい。アンケート以降に新しい動きもあった。1月18日に「平成22年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査」が発表され、2011年3月卒業の学生の内定率(12月1日現在)は68.8%だった。これは過去最低の数字で、前年同期より4.3ポイント低い。「就職は理系が強い」と言われるが、文系は同3.7ポイント減の68.3%であるのに、理系は同7.3ポイント減の71.3%と理系神話に陰りが見える。
11月17日には日本貿易会(商社の業界団体)が「新卒者の採用活動に関する基本的考え方」を発表し、全産業界が一致して新卒採用を見直すように求めた。具体的には現在よりも4カ月ほど後ろ倒しにすることを提言している。
半信半疑の人事が多い。2013年採用から変わるのか、変わらないのか?
●就職に関する協定や倫理憲章の歴史
人事関係者なら誰でも就職協定と倫理憲章を知っているはずだが、念のために説明しておこう。まず就職協定。
1953年に開始、1962年に廃止、1972年に復活。1986年に8月20日会社訪問開始、11月1日内定解禁として協定合意された。そして1996年に廃止された。
「8月20日会社訪問開始、11月1日内定解禁」とあるから、『昔はそうだったのか』と勘違いする人がいるかもしれない。わたしは1980年代から採用PRに携わってきたが、盆明けから採用活動を開始する企業はなかった。
今のように極端な早期から始まるわけではなかったが、年明けの2月くらいに就職媒体が発行され、学生は春休みを利用して就職活動していた。連休前後に内定を得る学生もいたと記憶している。今から思えば学生は時間に余裕のある春休みを利用して就活を行い、かなり多くの学生が早期に内々定を得ていた。もしかすると理想的な姿だったのかもしれない。
しかし理由はよくわからないが、「内定は10月1日」以降という考えが強く、春先の内定出しは早すぎると批判されていた。
ただ「10月1日」に根拠は乏しく、就職協定は守られなかった。いくら当時の文部省、労働省、経済団体、大学が決めても、まったく機能しない。それが1996年に就職協定が廃止された理由である。
代わって登場したのが経団連の倫理憲章だ。正確には「大学卒業予定者・大学院修士課程修了予定者等の採用選考に関する企業の倫理憲章」。経団連会員企業927社が賛同している(2010年3月8日現在)。
927社はかなり大きな数字だ。100人以上の大型採用をする企業はほぼ網羅されているから、この927社の採用総数はかなり大きいはずである。
しかしこの927社が倫理憲章を守っていないことは周知の事実だ。「10月1日までは正式内定を出していない」と反論するかもしれないが、内々定は実質的な内定である。いつの時代であっても、企業は優秀人材を獲得するためにモラルをかなぐり捨てるのだ。
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