(第44回)ITに対応できなかった史上最大の企業AT&T

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(第44回)ITに対応できなかった史上最大の企業AT&T

言うまでもないことだが、1990年代に起こった大きな変化に対して、すべてのアメリカ企業がビジネスモデルの転換に成功したわけではない。失敗した企業の典型として、AT&Tを挙げることができる。

AT&Tは、電話を発明したグラハム・ベルが興した「ベル電話会社」を前身とし、電話通信網の運営に加えて研究開発と機器製造も行い、従業員数が100万人を超える史上最大の企業だった。

単に大きかっただけではない。同社のベル研究所は、ノーベル賞級の研究者を何人も擁する世界最先端の研究所だった。トランジスタを発明したのもこの研究所だ。60年代には、AT&TとIBMが人類の未来を開くと、世界の誰もが信じていた。また、温情的、家父長的、終身雇用的な雇用の仕組みで「マーベル」(ベルお母ちゃん)と呼ばれていた。この点でも、IBMと似ていた。

ところが、そのAT&Tが80年代に急速に衰退したのだ。その始まりは、米司法省による反独占訴訟の結果としての解体である。84年1月1日、超巨大企業AT&Tは、長距離ネットワークの運営と研究開発・機器製造を行う新AT&Tと、七つの地域電話会社に分割された。

その後、新AT&Tは、研究開発部門(ベル研究所)と機器製造部門(ウェスタン・エレクトリック)をルーセント・テクノロジーとして自主的に分離した。これによってAT&Tは長距離電話会社となった。

ところが業績は上がらず、2005年に子会社の一つである地域通信会社のSBCコミュニケーションズに買収されることとなった。同社の経営陣の多くがAT&T出身であるとは言え、「子が親を買収する」結果になったわけである。その後、AT&Tを社名にすることとしたため、AT&Tという名称の企業は現在もある(写真)。しかし、それはかつてのAT&Tとはまったく別の会社だ。

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